木暮実千代
阿久津絹代
製作は「あの丘越えて」「母化粧」の山口松三郎、雑誌『主婦之友』に連載された富田常雄の原作から、「離婚結婚」の馬場当が脚色し、「わが家は楽し」の中村登が監督している。撮影は「純白の夜」の生方敏夫である。出演者の主なものは、「源氏物語(1951)」の木暮実千代、「麦秋」の佐野周二、「風雪二十年」の佐分利信などの外、水原真知子、柳永二郎、新人子役設楽幸嗣などである。
阿久津病院長の令嬢絹代は、藤間緑珠という舞踊の名取であった。乳母かねの息子野瀬滿也とは恋仲だったが、父に八木澤伊作との結婚を強いられ、滿也と駆落をした。しかし激怒した博士によってすぐにつれもどされ、滿也は恩愛の板ばさみになって苦しむ母を見かねて、絹代をあきらめ東京を去った。絹代は八木佐澤の弟神崎正一を訪ね苦境を説明して八木澤との縁談をことわるが、八木澤は急死したので、絹代は滿也の子を宿し、滿也の行方も判らず一人残された。そして六年の歳月がすぎ、滿也との愛の結晶光久を育てながら、踊りを教えながら生活を立てていた。そうした親子を蔭ながら援助して来たのが神崎正一で彼は絹代を愛し、結婚することを望んでいた。一方関西に落着いた滿也は出版事業で成功し、関西事業界の雄工藤の娘豊子と結婚し、六年振りで上京、パルプ会社を経営する神崎と手を握って事業への第一歩を踏み出した。滿也は偶然なことからわが子光久にめぐり会ったがそれをいち早く阿久津博士の秘書田中にかぎつけられ、豊子へも知れてしまった。豊子は田中と不倫な関係にあるにもかかわらず、滿也をひどくせめたので滿也は豊子との離婚を決意し、絹代に会わせてくれと神崎に頼んだ。神崎は舞踊大会が済み次第、絹代と結婚することになっているからとこれを拒絶するが、その大会で絹代は疲労から舞台で倒れた。この突発事件が六年ぶりの二人を相会わせた。神崎は二人の間の愛情が自分の力ではどうにもすることの出来ぬことを悟り、相抱く二人を残して去って行くのだった。
阿久津絹代
妹眞理子
父久造
絹代の子光久
野瀬滿也
母かね
神崎正一
工藤豊子
八木澤伊作
田中萬之助
[c]キネマ旬報社