藤田進
深見謙
製作は田村清、脚本は「海峡の鮫」の脚本を書いた柳川真一、監督は「午前零時の出獄(1950)」の小石栄一である。俳優は「裸女の愁い」の藤田進、「浪人街(1950)」の佐々木孝丸「火の鳥(1950)」の三條美紀、外に美奈川麗子、植村謙二郎、清水将夫などが出演。
流行歌手穂高晶子は、先夫矢部五郎の入獄中に彼と離婚をするが、出獄した矢部はそれを恨みに思い、晶子の許で育てられている二人の間の一子俊男をを奪って、それを種に復縁を迫っている。ところが俊男を預けられたダンサー崩れの島みつと、その仲間の三人の前科者、深見と赤沼と松本は、俊男を連れて逃げ改めて晶子へ子供と引かえに百万円よこせと脅迫状を送った。指定の場所は、特急「はと」の化粧室であった。ところが名古屋近くで加藤刑事に邪魔をされたので、中央線へ逃げ、更に追手を避けてみつの故郷の寒村へ下車、人目を避けて四人は子供を抱いて山深くわけ入った。その間に、山道に迷い込み、食糧は無くなり、子供に与えるミルクもおしまいになってしまった。首領株の赤沼は、さすがにそんなことにはおかまいなしに、百万円の宝物だと薄笑いを浮べていたが、みつは女の本能で、次第にこの赤ん坊に対する愛情が目覚めて来た。俊男が山中でさそりに咬まれた時、深見はその傷口へ口を当てて毒を吸い取ってやった。そうした人間らしい深見の行動にみつは好意を感じた。やっと四人は山のダムの番人小屋へ着き番人を脅して食糧や雨露をしのぐところにありついた。けれども赤沼は深見とみつを裏切って、松本と一緒に山を逃げようとするが松本が反対したので彼を射殺してしまった。山小屋のラジオに子供の行方を案じる晶子の歌声が流れて来て、深見は心を打たれた。早く子供を親に帰して百万円を手に入れようと赤沼を説得して、晶子の許へその旨を通知させた。その頃から、その地方一帯を猛烈な暴風雨が襲った。指定の山下の町へ着いた晶子はそこで深見に会い、子供の居所は必らず電話で知らせるというので百万円を渡した。その深見が電話をかけている間に赤沼は金を奪って逃げ出し、途中堤防の決壊に遭って水に流されて行ってしまった。一方深見とみつは赤ん坊を置いた町外れの工事小屋も危ないのを知ると、危険を侵して赤ん坊を救い出し無事に晶子の手へ返した。そして二人は、加藤刑事に、生れ変って生活をやり直すと誓ったのだった。
深見謙
赤沼一太郎
松本卯一
島みつ
穂高晶子
矢部五郎
静子
関口
源作
加藤刑事
係長
刑事
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