古川緑波
倉井一
「嫁入聟取花合戦」につぐ新東宝・吉本映画提携作品で、杉原貞雄氏の独立プロデュウサァとしての第一回作品である。最初“新東京五人男”の題名から改題されたもので東日・コロムビアが後援して劇中に“新東京音頭”がもり込まれる。脚本の八住利雄、監督の斎藤寅次郎、撮影の友成達雄は「のど自慢狂時代」につぐトリオで、主役は「のど自慢狂時代」で映画界にデビュした天才少女歌手美空ひばり(十二歳で横浜国際専属)彼女をめぐって吉本四人男のエンタツ、アチャコ、川田晴久(義雄の改名)木戸新太郎(ともに「嫁入聟取花合戦」に出ている)に「結婚狂時代」の古川緑波、新東宝の宮川玲子、野上千鶴子、田中春男らが助演する。特別出演は和田信賢、杉山よし子、並木一路、藤山一郎、赤坂小梅などである。
大学生栗山と貝塚が街頭でピーナツを売っていると、可愛いい花売娘ひばりちゃんがトラックにはねとばされた。貝塚はトラックを追っかけ、栗山は病院にかつぎ込んで輸血をする。おかげでフラフラになった二人は元気になったひばりに救けられて街頭にもどるとピーナツがない。二人の善行を見ていた青空楽団の沢田が代りに売っていてくれたのだ。ひばりの歌が素敵にうまいので沢田は彼女を引きとろうとするが、歌手町子の横ヤリでダメになる。栗山と貝塚は三太が経営するおでんや「のんき」の二階に間借りしているが、栗山は三太の娘久美子に惚れられて毎日大アツアツ。あてられる通しの貝塚はとうとう居たたまれず、友人で新婚早々の倉井のところに行く。倉井の家では叔父の遺産二十万円がころがり込んで派手好きの妻の新子が毎日今日は洋服、明日は首飾りと買いまくって倉井は悲鳴をあげている。一人女中がほしいというので貝塚はひばりを雇うが、新子のやきもちでクビになる。街でひばりは三太にひろわれて「のんき」まで来るが、中で貝塚と倉井が飲んでいるので逃げ出して沢田のもとに行く。毎日ひばりを探し歩く倉井、栗山、三太、貝塚はある日街頭で歌を歌っているひばりを発見し、協同でひばりの面倒を見ることにする。ひばりはお礼に百万円宝くじ一枚を出す。倉井は新子の浪費を悲観して毎日クサっているので、貝塚は一計を案じて新子のもとに倉井が自殺したと飛び込む。新子はおどろいて「実は二十万円を倉井に浪費させないために金持のマダム松枝から家具や宝石を借りて倉井の気持をテストしていたのだ」と白状する。倉井と新子は和解した。やがて放送局の街頭録音でひばりが「お父さん早く帰って下さい」と叫んだ一言が、父の耳に入ってなつかしい父子対面も出来た。ひばりの持っていた宝くじが百万円に当選した。沢田の作曲した“新東京音頭”も当選した。ひばりをめぐってみんな幸福になったのである。
倉井一
妻新子
栗山二吉
森三太
娘久美子
沢田四郎
貝塚五平
町子
ひばり
父初五郎
院長
アナウンサー
街頭録音の紳士
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