刑事の職を投げ打って被差別部落研究、部落開放運動に身を投じた実在の人物をモデルに、彼の足跡を記録とドラマの両面から描いた作品。大正9年に福岡県で生まれ、朝鮮総督府の巡査を経て福岡県警の刑事となった故・松崎武俊氏が被差別部落史研究にひかれてゆく姿を通して、同和問題を正面から扱った劇映画スタイルの文化映画である。松崎刑事は在職中に、ある傷害事件で逮捕した青年が被差別部落出身者であることを知り、青年の境遇を知るうちにそれまで無知だった被差別部落問題に目覚めていく。彼はやがて刑事を辞めて被差別部落史研究に没頭し、のちの被差別部落研究、部落開放運動に新たな一石を投じた存在となった。人生の後半にして被差別部落問題にのめり込んだ主人公の気持ちの移り変わりをじっくりと描いた好篇。監督は瀬木直貴。主演の松崎氏を演じるのは中西和久。郷土史研究の仲間に常田富士男がふんしている。96年度キネマ旬報文化映画ベストテン第8位。
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