脚本、演出
日本の屋根といわれる立山連峰にはさまれた黒部峡谷の風物と、黒部川第四発電所建設の初期工事を記録するイーストマン色彩PRの映画「第一集」、中学高校一般向。関西電力委託、文部省特選作。
ストーリー
数々のダム建設映画の中でもこれは異色といえる。というのは、どこのダムでも山奥に建設されるのは常だが、これは山奥の山奥が舞台なのである。従って特に本篇では全力をあげて、それがいかに大変なところかを描く。 黒部とは名だたる北アルプスの飛弾山脈が富山県境で二つに分れ標高三千米の立山を主峰とする立山連峰と、白馬や鹿島槍をつらねる後立山連峰の間にできた大峡谷である。黒部本流は世界でも類のない断層や四百米もある絶壁の間をぬって、万年雪にとざされる八千八谷の渓流をあわせて日本海にそそぐ。夏なおはだ寒い壮観さだ。古来から神霊のすむ秘境として閉ざされてきた黒部、人間が開発の手をつけたのは大正中期だが、いままた峡谷の歴史をかえようと人々がわけ入る。クマやサルやカモシカもとまどう断がいや密林の中を、人々は岩をうがち綱をはって流れをさかのぼり、また唯一の桟道をえいえいと進む。特にカメラは驚異の出色だ。ここに世界第二の高さの黒部第四ダムをつくり、七年掛り全地下式発電所を建設するのである。長野県からの輸送ルートである五キロのトンネル掘さくがはじまる。映画は早春から夏をへて秋にいたり、この山奥に有史以来初の越冬をこころみるため、女もまじるボッカ(強力)たちが立山ごえに物資をはこびこむところで第一集をおわる。