大西功一
佐々木功一
今や誰も住んでいない北海道の実家に帰郷した青年の心の彷徨を、静寂なモノクロ映像で描くドラマ。監督・脚本は、自主映画「吉祥寺夢影」で注目された新人・大西功一。撮影はテレビ・カメラマンで、「吉祥寺夢影」も担当した秋山透。音楽はムーンライダーズの前身バンド“はちみつぱい”で活躍し「あさってDANCE」ほかを手がけた渡辺勝が担当。大西自らが主演し、映画初出演の逢野亜紀子が共演、フォークソング界の重鎮・高田渡が二役で助演した。95年度製作作品。
30歳を目前にした功一は、東京での仕事や暮らしを捨て、故郷の函館に帰ってきた。功一は新しい望みを見つけられないまま、両親が死んで空き家になった実家で静かに暮らし始める。家に戻った晩、功一は何も言わずに残してきた東京の愛人に電話をした。霊感を持つというその女は、功一にオレンジ色のコートを着た女の子との出会いを予言する。翌日、昔馴染みのバーに出かけた功一は、そこで働き出したばかりのユミコと出会った。店には、死んだ父親に似たアコーディオン流しもいる。次の日も功一はバーを訪れ、閉店間際にはユミコとふたりきりになった。ユミコは何となく自分の身の上を語り出し、功一はゆっくりと彼女に心を開いていく。功一は力を失った自分について語り、そばに居てほしいとユミコに告げた。その夜、ユミコは功一の家に行き、続く一日もふたりで過ごす。ふたりで過ごす二度目の夜、功一はユミコを求め拒まれた。功一は東京の女との過去を話し、関係に終止符を打つ旨を伝える。ユミコもまた未練を残す男の存在を告白し、功一への愛情も伝えた。そしてふたりはベッドをともにし、一緒に暮し始める。そんな頃、東京の女から電話が入り、功一は恋の破局を予言された。ある停電の夜、ユミコから暗さを感じ取っていた功一は、亡き父の幻に向かい彼女と幸せになる決意を語る。翌朝の朝食にはユミコはいなかった。夜になって、功一は自分と同い年の息子がいるというアコーディオン流しと海辺で語り合う。功一はひとりあてもなく海辺で夜を過ごし、家に戻ると、ユミコがソファで寝ていた。壁には彼女のコートが掛かっている。
佐々木功一
鳥井ユミコ
父親、アコーディオン流し(二役)
マスター松下
サックスの男
ベーシスト
電話の女
常連客
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