ペテル・フォアマン
Olda
テレビのブラウン管の向こうにある、虚構の世界と青年の冒険を描いたファンタスティックなSF映画。単なるメディア諷刺を超えた奇想天外な発想と独特の不条理感覚、奇妙なビジュアル・センスが絶賛され、ヴェネチア映画祭UCCA venture賞、ブリュッセル映画祭グランプリをはじめ各国の映画祭で高い評価を得ている。監督は、「スイート・スィート・ビレッジ」の俳優・脚本家ズデニエック・スヴィエラークを父に持つチェコ映画界の新鋭、ヤン・スウィエラーク。脚本は、彼ら親子とヤン・スロヴァックの共同。撮影はアロイス・フィシャーレック、音楽はオンドジェイ・ソウクプとイジー・スヴォボダ、編集はF・A・ブラベッツ。出演は、映画監督ミロシュ・フォアマンの実子であるペテル・フォアマン、チェコ出身の英国女優エディタ・ブリヒタ、監督の実子ズデニエック・スヴィエラークほか。96ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭のヤング・ファンタスティック部門グランプリ受賞。連続レイトショー企画「ユーロ・ニューオーダーズ」の第1弾として公開された。
測地学者のオルド(ペテル・フォアマン)はある夜、つけっ放しのTVの前で眠り続け、やがて瀕死の状態に陥る。救急隊が駆けつけ、病院に運ばれたが、医師たちは原因不明のオルドの衰弱ぶりに首をひねるばかりだった。その夜、彼と同じ症状で隣のベッドに眠る想念の男ミクリクを謎の男フィサレク(ズデニエック・スヴィエラーク)が訪れる。フィサレクは自然学者と名乗り、未知のエネルギーをオルドに与え、彼の健康状態は一時的に快復する。退院したオルドは、この一風変わった男フィサレクと共に未知のエネルギーを採り、快復するトレーニングに励むが、謎の病気の正体は依然つかめない。そんなある日、ミクリクが死んだ。遺体の前で死因について考えるオルドとフィサレクは、駆けつけたミクリクの娘アナ(エディタ・ブリヒタ)に追い出される。オルドは、離婚経験のあるこの美しい歯医者に恋をしてしまった。謎の病を追うオルドとフィサレクは、病気の原因がTVにあることを突き止める。何と驚いたことに、TVのブラウン管の向こうには、映画セットのような虚構の世界が広がり、現実の世界の人間のエネルギーがTVを通してそこに集められていた。そこはまるで、天国のようでもあり、何でも夢がかない、あらゆるイメージがさまざまな形の物語として存在する、おかしくて楽しい世界だった。しかし、その酒池肉林の世界の片隅では、地上からのエネルギーが送られなくなり衰弱したミクリクが、タイタニック号のセットの中で葬られるようにしていた。一方、アナに自分の気持ちを打ち明けたオルドは、自分の生命エネルギーを奪うTVの世界と戦う決心をする。あらゆる種類のリモコンを買い集めた彼は、ガンマンよろしくリモコンを構えて街中のTVのスイッチを消して回る。オルドが生命エネルギーを集めて一挙に逆流させると、虚構の世界は消失した。
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