養子として育てられた女性が実の親を探し、その家族の中に入っていくことから明かされる、家族をめぐる“秘密と嘘”……そこから生まれる新しい家族の姿と和解を描くヒューマン・ドラマ。監督は「ネイキッド」のマイク・リー。いわゆる脚本はなく、シチュエーションとシーンの羅列を記した簡素なメモから、俳優たちとの長期リハーサルでドラマが作られた。製作はリーの製作会社シンマン・フィルムのプロデューサーとして『High Hopes』以来その全作を手掛けるサイモン・チャニング=ウィリアムズ。撮影はリーとは『ライフ・イズ・スイート』(V)以来のパートナーである、「アメリカン・ダンク」などのディック・ポープ。美術のアリソン・シティ、録音のジョージ・リチャーズ、編集のジョン・グレゴリーは「ネイキッド」に引き続いての参加。出演は「リバー・ランズ・スルー・イット」のブレンダ・ブレッシン、『ライフ・イズ・スウィート』(V)に続いて3作目のリー作品への出演となる「シェルタリング・スカイ」のティモシー・スポールほか。96年カンヌ映画祭パルム・ドール、主演女優賞(シンシア・パーリー)、国際批評家連盟賞の三冠を獲得した。
ストーリー
ホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バティスト)の養母が亡くなり、彼女は生まれてすぐ別れたはずの実の母を探し始める。社会福祉事務所で自分の養子縁組関係の書類を見た彼女は、黒人である自分の実母が白人だという記述に驚く。一方写真家のモーリス(ティモシー・スポール)は姉のシンシア(ブレンダ・ブレッシン)とその娘ロクサンヌ(クレア・ラシュブルック)のことが気掛かりで、妻のモニカ(フィリス・ローガン)と話し合ってロクサンヌの誕生日に二人を新築の自宅に招待することに決める。ホーテンスは実の母の住所を探し当て、悩んだ末に電話する。その実の母こそシンシアだった。彼女は最初は戸惑い、二度と電話しないでというが、やがて会うことを承諾する。待ち合わせ場所で黒人のホーテンスに尋ねられて彼女は驚いた。近くのコーヒーショップで話しているうちに、シンシアはホーテンスを身ごもった時の事情を思い出して泣き崩れ、何も言えなくなった。反抗的なロクサンヌに悩まされていたシンシアは、やがてホーテンスと会うことが嬉しくて仕方がなくなる。彼女はホーテンスをロクサンヌの誕生日に招く。「私の友達ということにしておけば大丈夫よ」。そして誕生日、モニカとロサンヌはシンシアの“友達”に少し戸惑いを見せるが、モーリスは親切だ。パーティーにはロクサンヌの恋人ポール(リー・ロス)とモーリスの助手のジェーン(エリザベス・ベリントン)もいる。やがて誕生ケーキが出てきたころ、シンシアは幸せのあまり、ホーテンスについての真実を打ち明けてしまう。一同は驚き、ロクサンヌは怒って外に飛びだしていく。ポールも後を追う。モーリスがバス停で座っていた姪とその恋人を説得して連れ戻す。シンシアはモニカを、たった一人の肉親モーリスを奪っていったとなじる。モニカは反論できない。モーリスは妻が子供を生めない体であることを明かす。なぜ最も愛し合うべき肉親どうしが傷つけあうのか、と彼は問いかける。そしてホーテンスに「苦痛を承知で真実を追究した君を尊敬する。もちろん君は僕の姪だ。家族として受け入れる」という。シンシアはロクサンヌに彼女の父だった男のことを明かした。彼はアメリカ人の医学生で、いい人だったわ、と。「私の父もいい人だった?」というホーテンスの問いに、シンシアは「それだけは答えられない」と言って泣き崩れた。ある日の午後、ホーテンスとロクサンヌの姉妹は、母のシンシアと共にお茶の一時を楽しむ。「人生ていいわね」とシンシアが呟く。
キャスト
ティモシー・スポール
フィリス・ローガン
クレア・ラッシュブルック
マリアンヌ・ジャン=バプティスト
エリザベス・ベリントン
リー・ロス
ミシェール・オースティン
レスリー・マンヴィル
ハンナ・デイヴィス
エマ・エイモス
スチュアート・ロン・クック
スタッフ
監督、脚本
マイク・リー
製作
サイモン・チャニング=ウィリアムズ
撮影
ディック・ポープ
音楽
アンドリュー・ディクソン
美術
アリソン・チッティ
編集
ジョン・グレゴリー
衣装デザイン
マリア・プライス
録音
ジョージ・リチャーズ
字幕
戸田奈津子
コラム・インタビュー・イベント
ニュース
作品データ
- 原題
- Secrets and Lies
- 製作年
- 1996年
- 製作国
- イギリス
- 配給
- フランス映画社
- 初公開日
- 1996年12月21日
- 上映時間
- 142分
- 製作会社
- シンマン・フィルム作品
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
[c]キネマ旬報社