サンドラ・サマルティーノ
Mimi
『赤ずきんちゃん』をモチーフに、無垢な少女のおびえを描いた一編。監督・製作・脚本・編集はこれがデビュー作となるルシール・アザリロヴィック。撮影・美術は彼女の公私にわたるパートナーであり、監督作「カルネ」でカルト的な信奉者を持つギャスパー・ノエが担当している。音楽はヴォル・ド・ニュイ。音楽構成はファビアン・ズリザノフスキー。世界的なデザイナー、アニエスb. が製作協力として資金を提供しているのも話題になった。出演はサンドラ・サマルティーノ、デニス・スクロプファー、ミッシェル・トリロほか。
現在のパリ。12歳の少女ミミ(サンドラ・サマルティーノ)は、母親とふたり暮らしをしていた。しかしその母親は愛人と喧嘩し、薬を大量に飲んで病院に運ばれてしまった。ミミはソランジュおばさん(デニス・スクロプファー)のアパートに引き取られることになる。ミミは物置の狭いベッドにひとりで寝かされることになった。だが、ソランジュは大きなベッドで愛人ジャン=ピエール(ミッシェル・トリロ)と寝ているのだった。そのジャン=ピエールは、ソランジュのいない時にミミにいやらしく触ろうとする。ミミは嫌がるが、ソランジュは彼に従順であるようにと命じる。ソランジュがジャン=ピエールとふたりだけで過ごす時は、ミミは部屋から締め出される。そんな時ミミは、同じ階に住むアラブ系の青年の部屋に入れてもらうのだった。しかし、時が経つにつれてソランジュとジャン=ピエールは、ミミに対してその青年との付き合いを禁じるようになった。絶望したミミは、母親と同じように薬を大量に飲み、病院に運ばれた。そして病院のベッドの中で、「あの家には帰りたくない……」と呟くのだった。
[c]キネマ旬報社