トークィル・キャンベル
Eric
アリューシャン列島の人々の間に昔から伝わる伝説を軸に、少年とアザラシの触れ合いを描く。製作はサミュエル・ゴールドウィン・ジュニア。監督はフランク・ズニガ。脚本はジョン・グローヴス、撮影はエリック・サーリネン、主題曲はジョン・バリーが担当。出演はトークィル・キャンベル、スティーヴ・レイルズバック、ぺネロープ・ミルフォード、セス・サカイ、リチャード・ナリタなど。日本版字幕は戸田奈津子。カラー、・ビスタサイズ。1983年作品。
アリューシャン列島のはずれ、ウナック島に、両親と3人で住むエリック(トークィル・キャンベル)は9歳。やさしい父ジム(スティーヴ・レイルズバック)と母(ペネロープ・ミルフォード)に恵まれて、平和に暮らしている。しかし、友だちはなく、遊びざかりのエリックには、もの足りない日々だった。ある日彼は、父やアレウト族の古老、セミヨン(セス・サカイ)、その息子、アレクセイ(リチャード・ナリタ)らと共に船でダッヂの町に買い出しに出かける途中、日の光にきらめく波間に、金色に光る生物を見たような気がした。他の者は見なかったと言ったが、盲目のセミヨンだけは、エリックの言葉を信じ、この土地に伝わる伝説を語ってくれた。昔、祖先がこの地に渡って来た頃、黄金のアザラシたちが彼らを守り、大地を愛することの意味を教えた。しかし、アザラシは、人間がその毛皮を狙い始めたので北極の氷の下に姿を隠した、というものだった。黄金のアザラシは、海峡に突風の吹く晩に戻ってくる…。エリックは、この話に魅せられた。すさまじい嵐の夕方、エリックは稲光の中で再び金色の生きものを見、それを追う内に父親とはぐれてしまった。避難壕に逃げ込んだエリックは遇然にも目の前に黄金のアザラシを発見した。しかも、アザラシの出産にまで立ち合うことになる。嵐が去った翌朝、彼らは海の中でたわむれ合いすっかり仲よしになってしまった。エリックは新しい友だちをガールと呼んだ。無事に家に戻った彼は、父に黄金のアザラシを飼う許可を得た。しかし、一緒について来た父はガールを見ると銃口を向けた。信じられないエリック。実はエリックの父ジムは、7年前にこのあたりで黄金のアザラシを見ており、その時から、高額の懸賞金とは関係なしに面子の問題で狩ることに執着していたのだ。嵐の晩、彼らの家に迷い込んだ流れ者のクロフォードもまた、伝説を耳にし一攫千金を狙っている男だった。アレクセイも、狩ると息まく。ただ1人、セミヨンだけが、そうした狩人たちのすべてをいさめた。「愛の使いを殺してはならない」。しかし、3人の男たちは、醜い争いをくり広げる。ガールを追い込んだクロフォードの前に、エリックが身を投げて立ちふさがる。「やめて!撃たないで!」。哀願する少年の目の前に自分の息子のために銃を捨てた父の姿があった。(松竹富士配給*一時間三五分)
Eric
Jim
Tania
Semeyon
Alexei
Crawford
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