戦後の混乱で帰国できなかった中国残留婦人の証言を通じて、その苦難の日々と、辛い生活の中でも抱き続けた命への深い思いを描き出したドキュメンタリー。監督は、本作の前身である短編「あなたの話を聞かせて下さい~中国残留婦人 栗原貞子さんの日々~」で2004年地方の時代映像祭奨励賞を受賞した東志津。
ストーリー
81歳の栗原貞子さんは東京都江東区の都営アパートで、1匹の年老いた白い猫と一緒に静かな余生を送っている。1944年。18歳の栗原さんは国のために尽くしたいと希望に燃えて、中国・東北部の満州へ旅立つ。しかしその直後、日本は敗戦を迎える。栗原さんは戦後の混乱のなか帰国することができず、35年もの間、中国残留婦人として苦難の日々をすごすことを余儀なくされた。それでも彼女は人と出逢い、家族を持ち、異国の地に根を張って新しい人生を切り開いてきた。そんな栗原さんの中国でのいちばん楽しい思い出は、野原いっぱいに咲いた花を見ることだったという。“生きれるまでは生きようね”という言葉を残して亡くなった友人の亡骸は、行方もわからぬまま中国で眠っている。