病原体実験施設、国立感染症研究所の移転を巡り、同所の主任研究官でありながら異を唱えるひとりの科学者の姿をとらえた長編ドキュメンタリー。監督は、本作が発の劇場公開作品となる『平野幻想』の本田孝義。撮影も本田監督自らが担当している。山形国際ドキュメンタリー映画祭99参加作品。VTR作品。ビデオプロジェクターによる上映。
ストーリー
1992年。病原体実験施設、国立予防衛生研究所(元国立感染症研究所)は、品川区から住居専用地域である新宿区戸山に移転した。この移転について、地域住民や早稲田大学教職員らの他に実名で反対意見を出したのが、同所の主任研究官である新井秀雄さんだ。新井さんは職場からの反発や自己矛盾に悩みながらも研究所の安全性を巡る疑問点を内部から出し、住民と共に東京地裁に移転差し止めの裁判を起こす。そんな中、裁判の一環として国際基準に基づいた国際査察が行われた。ところが、感染研側が提出した査察レポートに偽造著名が発覚したことから、感染研の信頼は失墜。住民側に優位な結果が得られた。しかし、1999年現在、バイオ施設を規制する法律のない日本では未だ裁判は継続中なのである。インタビューの中で、クリスチャンの新井さんは、職場に異を唱えた自分をここまで支えてくれたのは信仰だと語る。そんな新井さんも、定年まで4年を残すのみだ。