「オフサイド・ガールズ」などで知られるイランの名匠ジャファール・パナヒ監督が反体制活動により映画製作を禁じられ、友人の映画監督モジタバ・ミルタマスブの協力により自宅で撮影した映像。軟禁生活の様子をユーモアで綴りながら、逞しいプロテストを訴える。2011年カンヌ国際映画祭キャロッスドール受賞。
ストーリー
テヘランのとあるアパートメントの一室。軟禁中のジャファール・パナヒ監督自身の一日をカメラは映し出す。構想中の脚本を、舞台稽古のように絨毯にテープを貼って再現したかと思えば、タイミングよく上の階の住人が吠えまくる犬を預けに来たり。ごみ回収の青年が、パナヒが警察に連行された日のことを知っていたり……。どこまでが偶然でどこまでが演出なのか? スリリングなスタイルで周到に組み立てられた映像は、映画のラストで、建物のエレベーターを自由への逃走の場へと変えてしまう。観客は、パナヒ監督のユーモアに笑いながら、やがてその状況の重さに慄然とさせられるだろう。