マジッド・ニルマンド
アミル
「CUT」「マンハッタン・バイ・ナンバーズ」のアミール・ナデリ監督が、1985年に第7回ナント三大陸映画祭でグランプリを獲得したヒューマン・ドラマ。1979年に起こった革命後のイランの映画としては初めての国際映画祭受賞作となり、イラン映画へ注目を集めるきっかけとなった。貧しく孤独な少年が恵まれない環境の中、大好きなものに目を向け、まっすぐひたむきに走り、生きる輝きを体現する様を写し取る。撮影は「トラベラー」のフィールーズ・マレクザデエ。また、「バシュー/小さな異邦人」(未)の監督を務めたバハラム・ベイザイが編集を担当している。出演はマジッド・ニルマンド、ムサ・トルキザデエ、アッバス・ナゼリほか。
1970年代初頭のイラン。11歳の少年アミルは、浜辺に置き去りにされた廃船を住処として一人暮らしていた。孤児のアミルは、ビンの収集や水兵への靴磨き、水の販売などでなんとか糊口をしのいでいた。アミルは大きな白い船や空を飛ぶ飛行機、外国の綺麗な写真、チャップリン、友だち、そして何より走ることが大好きで、毎日が冒険かのようにわくわくしながら暮らしていた。アミルの仲間たちもまた天涯孤独の身だが、底抜けに明るい笑顔で全身全霊をかけ走りまわっている。競争に負けてもなお走り続けるアミル。友だちからの問いかけに、自分の力を確かめたいからと答える。ある日、アミルは自分がろくに文字を読み書きできないことに気付きショックを受ける。読み書きは世界を知ることの第一歩であるので、それ以来文字を習得するよう懸命に勉強するアミル。そんな中、天然ガスの炎が燃え盛る中に置かれた氷の塊を取りに行く火の競走の日を迎える。少年たちは氷の塊を求めて、ひたすら突き進む……。
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