監督、製作、撮影
1968年、福岡をはじめ西日本一帯で食用油のカネミライスオイルを食した人たちが健康被害を訴えた“カネミ油症事件”の被害者たちを10年間かけて取材し、彼らの今の生活を追ったドキュメンタリー。監督は、自治体や企業のPRビデオの仕事をしていた金子サトシ。キネマ旬報2011年度ベスト・テン文化映画第10位。
ストーリー
カネミ油症事件とは、1968年に、福岡、長崎、広島、山口、佐賀など西日本一帯で発覚した戦後最大の食品公害事件である。福岡県北九州市にあるカネミ倉庫株式会社が販売していたカネミライスオイルという食用油を食した人々が、顔面などへの色素沈着、塩素挫瘡(クロルアクネ)などの肌の異常、頭痛、肝機能障害、などの健康被害を訴え、翌年までにおよそ1万4千人が保健所などに届け出た。また、皮膚に色素が沈着した状態の赤ちゃんが被害者の母親から産まれ、“黒い赤ちゃん”として話題となった。2000年、市民団体主催で、長崎県五島列島でカネミ油症被害者たちの自主検診が行われる。この自主検診に参加した金子サトシ監督は、カネミ油症被害者の聞き取りを始める。厚生労働大臣が国会答弁でカネミ油症の原因物質がPCBだけでなくダイオキシン類であることを正式に認めた2002年、カネミ油症被害者支援センターが設立される。2006年から金子監督は被害者たちの家を訪ね、ビデオによるインタビューを始める。未認定患者の発掘運動を積極的に行ってきた被害者や、メシマコブが癌に効くことを自ら試し、販売するようになった患者、認定被害者の親から口唇口蓋裂の症状を抱えて産まれてきたが、いまだ被害者として認定されていない人などの証言を紹介する。