イルッカ・コイヴラ
第1話「バーテンダー」
ポルトガル発祥の地といわれる古都ギマランイスをテーマに、「ル・アーヴルの靴みがき」のアキ・カウリスマキ、「コロッサル・ユース」のペドロ・コスタ、「ミツバチのささやき」のビクトル・エリセ、「夜顔」のマノエル・ド・オリヴェイラが競作したオムニバス。EU提唱の2012年“欧州文化首都”に指定されたギマランイスを紹介するために企画された作品。
〈第1話 バーテンダー〉ひっそりとしたギマランイスの朝。男(イルッカ・コイヴラ)はバーへ出勤する。床を掃除し、野菜を刻んで、出汁をとる。もうすぐ昼時。男は自慢のスープでランチの客を待ち構えるが、正午になっても誰も来ない。ふと通りを見ると近所の店が賑わっている。その店のメニューには“本日のランチ:スズキ、鱈、タコのオリーブ添え”と書かれてある。男は自分の店に“イワシの油漬け”と“漁師のスープ”を追加するがそれも徒労に終わる。夜。バーを閉めた後、男は身だしなみを整え、カーネーションを買って女を待つ。しかしバス停に彼女の姿はない。家へ戻り、ひとり酒を飲む男。野良猫のためのミルクを戸口に出し、男の1日は今日も終わる……。〈第2話 スウィート・エクソシスト〉1974年、独裁政権を打倒するため、若手将校たちは立ち上がった。ヨーロッパ最長の独裁体制を無血で終わらせた“カーネーション革命”。ポルトガルの植民地カーボヴェルデからやって来た移民労働者のひとり、ヴェントゥーラも青年将校たちと共にクーデターに参加した。だが深い森の中で彼は意識を失う。気が付くと、彼は精神病院に収容されており、エレベーターの中にはブロンズのペンキを塗りたくったポルトガル人の兵士がいる。故郷の歌を唄うヴェントゥーラ。兵士は応える。「物語はまだ終わっていない。この苦痛が未来の人々の喜びになる。俺たちは美化して語られるだろう。なぜ俺たちが生きて苦しむか直に分かる。全て分かる……」やがて、エレベーターの扉が開いてヴェントゥーラは森の中へ帰っていく……。〈第3話 割れたガラス〉1845年創業のリオ・ヴィゼラ紡績繊維工場は20世紀初頭にヨーロッパ第2の繊維工場へと発展するが、1990年、経営危機に陥り、2002年に閉鎖。現在は“割れた窓ガラス工場”と呼ばれている。そんな工場の食堂だった場所でかつての労働者たちが話をする。52年間務めた修理工や両親も祖父も同じ工場で働いたという女性たち。彼らは人生の1コマを語り、思い出の一部を振り返る……。〈第4話 征服者、征服さる〉ギマランイス歴史地区へやって来た観光客たちは、バスの中で街の来歴を聞いていた。ブルゴーニュ家エンリケ伯の子アフォンソは、1128年6月24日、サン・マメデの戦いを皮切りに次々と勝利を収め、1139年にはムーア人と戦ったオーリッケの戦いに勝利。1140年にポルトガル王を自ら宣言した……。広場にバスが到着。大勢の観光客たちにガイド(リカルド・トレパ)は説明する。「この街で初代ポルトガル王は誕生しました」征服者アフォンソ・エンリケスの銅像に対し、一斉にシャッターを切る観光客たち。ガイドは言う。「ご覧下さい。撮影を止めない観光客により征服者が征服されました……」
監督、脚本
監督、脚本、撮影
監督、脚本
監督、脚本
製作
撮影
撮影
撮影
音楽
[c]キネマ旬報社