セナダ・アリマノビッチ
セナダ
ボスニア=ヘルツェゴヴィナに住むロマ民族の女性が、保険証を持っていないために手術が受けられなかったという実際の事件を基に「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノヴィッチ監督が映画化。事件の当事者たちが出演し、一度も演技経験がないにも関わらずナジフ・ムジチは2013年ベルリン国際映画祭で主演男優賞を受賞した。第14回東京フィルメックス特別招待作品。
ボスニア=ヘルツェゴヴィナで暮らすロマの家族、ナジフとその妻セナダ、二人の娘たちは慎ましいながらも幸せな生活を送っていた。ナジフは拾った鉄くずを売って一家の生計を支え、セナダは3人目の子をお腹に身ごもっている。そんなある日、ナジフが一日の長い労働から帰ると、セナダが強い腹痛を訴え、横になっていた。翌日ナジフは車を借りて、いちばん近い病院にセナダを連れて行く。診断によると、セナダは流産、5か月の胎児は腹の中で死んでいるという。セナダの命に関わる状態なので、遠い町の病院ですぐにでも手術を受けなくてはならない。だが、セナダは保険証を持っていないので、病院は980ボスニア・マルク(500ユーロ)の支払いを要求する。貧しい鉄くず拾いには、ひと財産だ。結局ナジフの懇願にもかかわらず、セナダは手術をしてもらえず、ボスニア=ヘルツェゴヴィナ中央のロマ人地区に帰るしかなかった。ナジフはセナダの命を救うため、死にもの狂いで鉄くずを探し、国の組織に助けを求めるのだが……。
[c]キネマ旬報社