監督、脚本、編集
1970年代後半、ポル・ポト政権下のカンボジアでは音楽や映画が禁止され、多くの映像が廃棄処分となったという。『THE MISSING PICTURE』は、その時代に少年期を過ごし、両親を始め多くの親族を失ったリティ・パニュが自らの体験を語りつつ、失われた映像を取り戻そうとした試みとも言える作品。丹念に彩色された土人形をジオラマ風に配置し、当時の庶民の生活が再現される。それはある時は華やかな街頭の風景であり、ある時は陰惨な収容所である。更にパニュは、当時の政治的プロパガンダ映像を導入し、それを人形たちの映像と巧みに構成した。カンヌ映画祭「ある視点」部門最優秀賞受賞。第14回東京フィルメックス特別招待作品。
ストーリー
1975~1979年のカンボジアを支配したポル・ポト率いるクメール・ルージュによる虐殺の記憶。映画監督リティ・パニュは幼少期、クメール・ルージュの粛清に遭い、最愛の父母や友人たちを失った。当時、数百万人の市民が虐殺され、カンボジア文化華やかなりし時代の写真や映像はすべて破棄された。色鮮やかなカンボジアの文化が、クメール・ルージュによる“黒”と紅い旗とスカーフだけの世界に一変した。失われた記録を補うためにその頃の風景を再現した人形と交互に映し出されるプロパガンダ映像。そこに登場するポル・ポトはいつも笑顔だ。ベトナム戦争を背景とした冷戦下の大国の対立に端を発したカンボジアの悲劇。失われた映画や写真は果たして甦るのか?なぜ、陰惨な歴史は繰り返されるのか。リティ・パニュとフランス人作家のクリストフ・バタイユによって積み上げられた言葉が、犯罪と歴史の記憶を暴いてゆく。
スタッフ
ナレーション
ランダル・ドゥー
製作
カトリーヌ・デュサール
撮影
プリュム・メザ
音楽
マルク・マーデル
編集
マリ=クリスティーヌ・ルージュリー
テキスト
クリストフ・バタイユ
人形制作