ジャン=ピエール・レオ
Claude
姉妹と青年との三角関係を描くフランソワ・トリュフォー監督の代表作の完全版。製作時レイティングと興業要請によりカットされた25分強を、既に病床にあったトリュフォー監督自身が再編集・復元し、1984年6月末に完成させた。原作はアンリ・ピエール・ロシェ。出演はジャン・ピエール・レオー、キカ・マーカム、ステイシー・テンデター、シルヴィア・マリオットほか。
クロード(J・P・レオ)が最初にであったのはアンヌ(K・マーカム)だった。母の旧友の娘で、英国からパリに遊びにきていた。彫刻が好きでロダンに傾倒しているという。ぜひ妹にあわせたいという彼女の誘いでクロードの英国行きが実現し、三歳年下の、眼を病む勝気な娘ミュリエル(S・テンデター)とあった。姉妹の家の客となったクロードを、二人は「大陸」と呼び、「フランス」と呼んだ。年頃の美しい姉妹のどちらにも惹かれて、クロードの心は微妙に波立った。だがミュリエルが自分を愛しているらしいことを知った彼は結婚を決意するが、姉のアンヌもまた、彼を愛しているとは気づかなかった。結婚について、姉妹の母ブラウン夫人(S・マリオット)は異存なかったが、一人息子を奪われる悲しみから、ロック夫人(M・マンサール)は猛反対した。その妥協案として、一年後、二人の情熱が変らなければ結婚してもいい。その間はあうことも文通も禁じられた。けれども一年は長かった。美術関係の仕事を始めたクロードは、女流画家との情事にふけり、ミュリエルのことは忘れてしまった。彼は別離の手紙を書き、ミュリエルからは承知したという返事がきた。時がすぎ、クロードは美術評論家として売りだし、適当に女遊びも重ねた。そんなある日、パリで彫刻の勉強に励むアンヌに再会した。おたがいに胸にうずくものを感じた二人は、スイスの貸別荘で結ばれた。情事は重ねられ、女として目覚めたアンヌは、男たちにいい寄られるようになった。そしてディウルカというスラブ人とペルシャに旅立った。アンヌは自由な女に変貌したが、日曜学校の先生になったミュリエルは、自分にきびしいピューリタンであった。その彼女が、姉に連れられてクロードの前に現われた。四年ぶりの再会だった。不実とはわかっていながら、彼は心乱れ、今さらのように彼女への愛がこみあげてきた。思いはミュリエルも同じだった。ミュリエルとクロードの愛の成就を望んだアンヌは、クロードとのことを妹に打ち明けたが、ミュリエルはショックのあまり気絶した。アンヌは妹を国へ連れ帰り、ミュリエルはクロードに別れの手紙を書いた。姉妹で同じ男を恋し、いまも愛する悲運をなげいた。クロードは胸を打たれた。彼は苦しみ、絶望に沈んだ。その底から立ち直ろうと、最初の小説を書きあげた。「ジェロームとジュリアン」。二人の男を愛した女の心を通じて、彼は姉妹への愛を綴った。それからしばらくして病に倒れたアンヌは息を引きとった。やがてクロードはミュリエルの消息を知り、あいにでかけた。ホテルの一室で二人は激しく抱擁した。思えば、最初のであいから七年の歳月が流れていた。だが、翌朝彼女は去った。人生に確信を抱いて。クロードは一人になった。--時が流れ十五年が過ぎていた。風の便りに、ミュリエルは教師と結婚し、男と女の子をもうけたという。十五年--いまクロードは、かつてアンヌと通ったロダン美術館を訪れる。バルザック像に人が集まっていた。英国の小学生たちが観覧にきていた。もしやミュリエルの娘はいないか。たずねてみようか。いや聞いて何になろう。彼は静かに歩み去った。タクシーの窓ガラスに映る自分の姿。これが僕か? まるで老人のようだ。背後で美術館の庭の扉が、ゆっくりと閉まった。それは青春の庭との訣別であった。
Claude
Anne
Muriel
Mrs Brown
Diurka
Mme Roc
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