ミンヨン
ミンヨン
テレビドラマの演出家として『川の流れはバイオリンの音』などで国際的な評価を得た佐々木昭一郎が、約20年ぶりにメガホンを取った初の長編劇映画。音楽を愛する韓国の大学生が、日本への旅を通じて戦時下を生き抜いたある家族の苦難を追体験してゆく。主演のミンヨンは、留学生だった当時、佐々木の目に留まって出演が決定した。
ミンヨン(ミンヨン)は『倍音の法則』という小説を書くソウルの大学生。混迷する現代の不安を一身に感じている。夢見がちな彼女にはユンヨン(ユンヨン)という仲のよい妹がいる。2人は子どもの頃、日本で暮らしたことがあり、日本語も英語も堪能だ。そして2人は何よりもモーツァルトの音楽が大好きだった。ミンヨンは亡き祖母が遺した1枚の古い写真になぜか心をとらわれている。祖母の親友、日本人の佐々木すえ子一家を撮った戦時中の写真だ。ある日、英語教師を目指すユンヨンが実習のために日本へ渡る。すえ子への思いを抑えきれなくなったミンヨンも、ユンヨンの後を追うように日本を旅する。東京で彼女が出会ったのは、ストリートチルドレンのユウ。自分を捨てた母への思いをミンヨンに重ねるユウの存在はミンヨンの胸に深く刻まれ、2人は強い絆で結ばれてゆく。さらに彼女は、早稲田大学留学時の親友、旦部(旦部辰徳)と再会。フリージャーナリストとして社会の暗部を取材する旦部は、常に何者かに追われていた。彼女が行く先々で巡り合う人々、風鈴作り、サッカーの笛作り、塩作り、カメラを持つ謎の老人、長崎へ旅する神父の姿をした男、ピアニスト……。様々な人や事柄が響き合ってゆく。そして突然訪れる旦部の謎の死。しかしモーツァルトの曲が絶え彼女を先へと導く。そして遂に、すえ子がかつて住んでいた屋敷を探し当てたミンヨンは、70年余りの時を超えて戦時下の彼女の過酷な人生を生きる。新聞記者だったすえ子の夫は、戦火が拡大する中、軍部を批判する記事を書いたために新聞社を解雇され、汽車で旅行中に息子の前で何者かに殺害される。以降、すえ子と息子は厳しい社会統制の中、人間らしく生きようとしたために様々な苦難を経験するのだった。そして現代に戻ったミンヨンは、人々との交流や音楽の奥深い魅力を心に刻み、ハーモニーへの夢を育んでゆく。
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