2008年のコソボ独立反対運動にインスパイアされた、セルビア出身のイヴァン・イキッチ監督の長編デビュー作。かつて工業地帯として栄えた町を舞台に、理想とは程遠い現実の中で、夢も希望もなく生きる若者たちの姿を描く。主演のジェリコ・マルコヴィッチやネナド・ペトロヴィッチなど、リアリティを追求するため、出演者には地元の不良少年たちが起用されている。
ストーリー
2008年2月17日、コソボはセルビアからの独立宣言を行い、セルビア政府は強く異議を唱えた。精神的に大人になり切れず、仮釈放中の問題児ルカ(ジェリコ・マルコヴィッチ)は、かつて工業地帯として栄えた町ムラデノバツに暮らしていた。セルビアの首都ベオグラードから50kmほどの距離にありながら、閉鎖的な街をうろつくだけの毎日を過ごすルカにとって、鬱屈した生活の中で唯一発散できることは、地元サッカーチームの応援。サポーターを仕切るリーダーのフラッシュ(ネナド・ペトロヴィッチ)は親友で、いつも夜中まで一緒に飲んで騒いでいた。そんなある日、ルカは自宅にやって来た社会福祉士から、家族の秘密を聞かされる。コソボ紛争で死んだと思われていた父が生きており、ルカを捜しているというのだ。突然の事に当惑するルカ。何故か母は、父の消息をひた隠しにしていた。家族の問題が解決されないまま、仮釈放中のプレッシャーや恋の悩みなどで苛立ちを抑えられなくなったルカは、いざこざを起こして地元サッカーチームのトップ選手の脚を折ってしまう。これによってチームのメンバーやサポーター、さらには友人たちからも追われることになったルカは、行き場を失くす。そんなある日、一方的に独立を宣言したコソボに対する抗議デモがベオグラードで行われ、多くの若者が参加。ルカも仲間たちとデモに向かうが、信念もなく、ただ暴れて強奪を楽しむ仲間の姿を見て、ふと我に帰る。“一体、自分は何者で何がしたいのだ……?”自問自答したルカは仲間たちから離れ、ベオグラードにいる父に会うため、バスに飛び乗るが……。
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