心ない独裁者の取り決めによって、かけがえのない芸術を奪われたパキスタン・ラホールの演奏家たち。制圧がいくらかましになった現在も、地元では周囲の目(耳)を気にして、防音室にこもって練習していたりする。やりたいことをやりたいときにやる、そんな当たり前の自由がないつらさ。戦争を知らない世代の日本人には、ただ拙く想像してみることしかできない世界です。
不自由な世界にありながら、民族音楽とジャズをみごとに融合させたセンスとテクニックが素晴らしい。「それでも音楽が好き」を極めた人びとだからこそできたことなんでしょうね。にしても、NYに到着したのが本番のたった4日前。見せ場をつくるはずだったシタールの演奏者があっという間にメンバーから外されたときには、うまくいく話なんだとわかっていても気が気じゃなかった(笑)。
ジャズの神様が降臨したかのような、終盤の盛り上がりに涙が滲みました。観てよかった。