シンガーソングライターの七尾旅人が、将来、日本で数十年ぶりに出るであろう戦死自衛官“兵士A”に扮するというコンセプトで開催されたライブの模様を収めた音楽ドキュメンタリー。数々の楽曲を通して、人間であることの困難さや微かな希望を描き出す。監督は「ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~」の河合宏樹。2016年8月15日、先行上映。
ストーリー
冷戦時代、アポロ11号の月面着陸で幕を開け、9.11同時多発テロに端を発するアフガン・イラク侵攻を機に衰え始めた超大国アメリカと、再び戦場へ回帰して行く日本を描き出した予見的な作品「911FANTASIA」。震災に向き合い、東北に通って作り上げた「リトルメロディ」。意欲的な取り組みを続けるシンガーソングライターの七尾旅人が、2015年の秋に開催した『兵士A』。それは、断髪して自衛官の格好をした七尾が、近い将来、この国に数十年ぶりに現れるかもしれない1人目の戦死兵“兵士A”に扮して開催するワンマンライブ。書きためられた大量の新曲の中から相応しい楽曲を選び、時間と空間を越えておよそ100年の壮大なスパンで、人間であることの困難さや、微かな希望を描いたこの壮絶なライブを、新進気鋭の映像作家・河合宏樹が撮影、編集。七尾の最新アルバムとでもいうべきライブ映像作品として結実した。ポップ史に残る様々なロックオペラやコンセプトアルバムを想起させながらも、そのいずれもに似ない徹底された世界観。オルタナティヴ・フォーク、ポエトリー、スタンダード歌曲からダンスミュージックに至るまで、多様な音楽が1つのテーマを浮かび上がらせる。「地獄の黙示録」、「フルメタル・ジャケット」などの傑作映画を連想させつつ、ガットギターによる弾き語りとヴォイス・エフェクト、幾つかの機材のみで実現した。完全なソロ公演を予定していたこのライブに、日本屈指のサックスプレイヤー梅津和時が、即興演奏で参加。さらに、アニメーション作家ひらのりょうによる研ぎ澄まされた舞台映像が加わり、「兵士A」の世界がさらに深化した。
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