監督
1972年、史上最大の規模で行なわれたミュンヘン・オリンピックの公式記録映画。製作は「大自然の闘争」のデイヴィッド・ウォルパーとスタン・マーグリース。全編の音楽はヘンリー・マンシーニが担当。日本語版監修は清水俊二。イーストマンカラー、ビスタサイズ。1973年作品。
ストーリー
始まりのとき 監督ユーリー・オゼロフ、脚本デリアラ・オゼロワ、撮影イーゴリ・スラブネビッチ、122カ国から8000の選手が195個の金メダルをめざしてミュンヘンに集まった。中には5本の指にも満たない選手しか送ってこない国もあれば、3台のジェット機を貸し切って乗り付ける国もある。人はいう。『4年に1度のオリンピックで勝つ事は、世界新記録を破る事より難しい。毎年の世界選手権大会の優勝メダルがいくつあっても、オリンピックの金メダル1つにおよばない』と。この4年に1度という重圧の前に、総ての選手の胸はふるえおののく。人生の目標をこの4年に1度の日にかけて、努力に努力を重ねてきた者の、競技開始1分前のおそろしい程の長い瞬間。 最も強く 監督マイ・セッタリング、脚本デイヴィッド・ヒューズ、撮影ルネ・エリクソン、世界中の大男が世界1力持ちを競うウエイト・リフティング。この男臭さ1色の世界に、スウェーデンのグラマー女優から転じた女流監督が挑む。『私はスポーツには興味がない。ウエイト・リフティングの知識もないが、彼らの執念に心ひかれた』と彼女はいう。晴の舞台で大男たちの勝敗を決めるものは、精神の集中が生む一瞬の“力の爆発”である。その一瞬を求めて、巨像のような男が、ピットの上を狂ったように歩き回るのだ。 最も高く 監督アーサー・ペン、撮影ウォルター・ラサリー、『より速く、より高く、より強く』…これはオリンピックの精神である。その『より高く』の理想を最高度に具現する棒高飛び。弓のようにしなうグラスファイバーのポールに体を弾ませて、人間は5メートル以上の高さを征服する。赤くぬられたバーを逆立ちするようにして越え終わった時、彼らはこらえきれない喜びを胸に、5メートルの空間を落下する。バーに体がふれ、バーが失望に大きく歪む。 美しき群像 監督マイケル・フレーガー、唄(春の声)リタ・シュトライヒ、古代オリンピックの当時は、女性は競技に参加する事はおろか見物することも許されなかった。それにひきかえ、ミュンヘン・オリンピックでは近代オリンピック史上最高の数の女子選手が参加した。開会式の選手宣誓も初めて女性によって行なわれた。 最も速く 監督市川崑、脚本谷川俊太郎、撮影山口益夫、マイク・デイヴィス、人間は100メートルを約10秒で走る。全速力の突進を10秒間続けるのだ。そのすばやい動きをとらえるために、ここでは34台のカメラと6000メートルのフィルムが使われた。時間は4倍に引きのばされ、100メートルを40秒かかってのたうつようにゴールになだれこむ男たちの動作が不気味な程細かく分析される。大きく波打つ頬、潮流にただよう軟体動物のような唇の動き… 2日間の苦闘 監督ミロシュ・フォアマン、撮影ヨルゲン・ベルソン、ベートーベン第9交響楽(ザワリッシュ指揮)、ババリア民族音楽(ビタ・ババリカ)オリンピックのメーン・エベント、輪状競技で100メートルとならんで、“競技者中の競技者”と讃えられるのは、2日間にわたって死闘がくりひろげられる10種競技の優勝者である。100メートル、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、そして苦しい400メートル。円盤投げ、棒高跳び、やり投げを終わって、最後の1500メートルは精も魂もつき果てた男たちが最後のスタミナをかり立てる凄惨な闘いである。 敗者たち 監督クロード・ルルーシュ、撮影ダニエル・ボクニー、競技は冷酷だ。『これが反則負けだなんて、あんまりだ、こんな判定ってあるもんか』。いくらわめこうがどうしようが、レフェリーの判定はくつがえらない。闘い終わって、敗戦をどうにもあきらめきれない自分をもう1人の自分が説得し、あきらめさせる“瞬間”の長さ、苦しさ、スポーツの世界に負傷はつきものだ。負傷は長い間の夢を一瞬にして砕いてしまう。 最も長い闘い 監督ジョン・シュレシンジャー、撮影アーサー・ウースター、電子音楽ブライアン・ホジソン、“レインボー・コーラス”ウィルヘルム・キルマイヤー、大会11日目、平和の祭典は血に染められた。パレスチナ・ゲリラが選手村を襲い、イスラエル選手2名を射殺、9名を人質とした。この事件について、イギリスのマラソン選手、ロン・ヒルは語る。『この事件のためにマラソンの日程が1日ずれた。このコンディションの調整をどうするか、それ以外にいっさい考えない事にする』。ゲリラの犠牲になったイスラエル選手11名の慰霊式。スタンドを埋めたよその国の人々もハンカチをぬらした。空港では無情に焼けただれたヘリコプターが生々しい惨劇を物語っている。閉会式の日、ブランデージ会長は最後の挨拶をした。すでに次期会長はキラニン(アイルランド)と決まっている。『また会おう モントリオール 1976』の電光文字を夜空に輝かせて、ミュンヘンの17日間は終わった。(東和配給*1時間51分)
スタッフ
監督
マイ・セッタリング
監督
アーサー・ペン
監督
ミハエル・プレガー
監督
市川崑
監督
ミロシュ・フォアマン
監督
クロード・ルルーシュ
監督
ジョン・シュレシンジャー
脚本
デリアラ・オゼロワ
脚本
デイヴィッド・ヒューズ
脚本
谷川俊太郎
指揮
ウォルフガング・サヴァリッシュ
製作
スタン・マーグリース
製作
デイヴィッド・L・ウォルパー
撮影
イーゴリ・スラブネビッチ
撮影
ルネ・エリクソン
撮影
ウォルター・ラサリー
撮影
エルンスト・ヴィルト
撮影
山口益夫
撮影
マイク・デイヴィス
撮影
ヨルゲン・ペルソン
撮影
ダニエル・ボクリー
撮影
アーサー・ウースター
音楽
ヘンリー・マンシーニ
音楽
ウィルヘルム・キルマイヤー
録音
ブライアン・ホジソン
歌
リタ・シュトライヒ
作曲
Vita Bavarica and Platzl
字幕
清水俊二
コラム・インタビュー・イベント
ニュース
作品データ
- 原題
- Visions of Eight
- 製作年
- 1973年
- 製作国
- アメリカ 西ドイツ
- 配給
- 東和
- 初公開日
- 1973年9月22日
- 上映時間
- 111分
- 製作会社
- デイヴィッド・ウォルパー・プロ作品
- ジャンル
- ドキュメンタリー
[c]キネマ旬報社