グラディス・マッコネル
Wife
「岡惚れハリー」に次いでハリー・ラングドン氏が監督主演した喜劇で、アーサー・リップリー氏が原作し、クラレンス・ヘンネック氏、ロバート・エディー氏、ハリー・マッコイ氏が共同脚色した。相手役も「岡惚れハリー」に同じくグラディス・マッコネル嬢が勤めている。
気の弱いハリー・ラーキンは家庭ではいつも口やかましい妻と厳しい妻の母親とに悩まされていた。そしてたまたま友人のバッドに誘われてダンスホールに立寄り何時もの帰宅時間より2時間程遅くなったがために、妻は己が威厳が完全に良人に保たれていないのを遺憾とし良人ハリーを相手取って離婚訴訟を起した。判事はこれに対してハリーに良人としての責任を自覚させるという理由で1ケ月妻の衣服を纒ひ妻に代って家事一切を見るべきことを宣告した。この前例なき珍判決はたちまち新聞に書立てられ各方面での笑い草となった。ところが当のハリーに取ってはお笑い話どころでなく、まるで勝手が違う上に彼を女と見た出入りの商人達にひつつこく言寄られて持て余した。困却した末、最後の手段として悲壮な書置を残して自殺を計ったが、気弱のハリーはそれも出来ず折良く来合わせたバッドと共に郊外へ車を飛ばした。郊外は正に野遊びの好時節だったので春を楽しむ美しい婦人たちが多勢来ていた。敷日来憂欝になっていたハリーは俄然はめを外してそこで火騒動を引起し、女に追われながらやっとバッドに助けられて家まで逃げて来た。一方ハリーの書置を見た細君は始めて良人の存在を自覚して悲歎の涙にくれている時も時死んだと思ったハリーが帰って来たので思わず彼の胸に抱きついた。それ以外ハリーは家庭の主人として良人としての幸福を味うことが出来たのである。
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