障害者の自立生活運動を追ったドキュメンタリー。障害当事者が運営をし、重度の障害があっても自立して生活ができるよう支援する自立生活センターを舞台に、障害者が庇護から抜け出し自らの人生の主体者となることを求めてきた自立生活運動の現在を映し出す。自らも介助者として働く田中悠輝が、自立支援の現場で働きながら、3年にわたり撮影。「小さき声のカノン −選択する人々」など数々のドキュメンタリー作品を監督してきた鎌仲ひとみがプロデューサーを務める。2020年1月11日より大阪・第七藝術劇場にて先行上映。
ストーリー
大阪にある、3つの自立生活センターでは、障害当事者が運営をし、日常的に手助けを必要とする人が一人で暮らせるよう支援をしている。施設や親元からの自立を目指す障害者には、それぞれ自立にいたる困難や喜びがある。渕上賢治は頸髄損傷により17歳で障害者となり、それから15年間母親の介護のもと自宅での寝たきり生活を余儀なくされた。ある日、母親が介護の疲れからか倒れ、そのまま逝去。施設にも入れずにいた時に自立生活夢宙センターと出会い、障害者も自立生活ができることを知る。その時に渕上さんを自立させるべく訪ねてきたのが、代表の平下耕三だった。平下は先天性の骨形成不全症を抱え、親からの抑圧や施設での過酷な経験、職場での差別を経て、自立生活センターを立ち上げたばかりだった。車椅子に乗ることもままならない状況だった渕上さんは、2年ほどかけてようやく地域での自立を果たす。自立生活をもっと広げたいとの思いから、渕上も自ら自立生活センター・ムーブメントを立ち上げる。脳性麻痺と知的障害を持つ18歳の山下大希は、山の中の施設で育ち、普通教育を受けて育った若者が持っているはずの経験を奪われてきた。他者との接し方に課題を抱えながらも、周囲の先輩当事者やヘルパーとともに自分らしい生活づくりに向けて歩みだす。脳卒中で倒れ、高次脳機能障害と診断された木下浩司郎は、右半身の麻痺と言語障害があり、ヘルパーへの指示や意思の疎通に困難があるが、それでも自立生活夢宙センターでILP(自立生活プログラム)を始める。俳優になりたいとの彼の言葉により、夢宙センターで自主制作映画の企画が立ち上がり、木下の出演が決まる。同じく夢宙センターでILPを受けている知的・精神障害当事者の阿部明日香は、先輩当事者の内村恵美と一緒に親元からの自立を目指しているが、ある日、母親と衝突してしまう。泉大津にある自立生活センター・リアライズでは自身の体調と相談しながら自立を目指す重症心身障害者の池本博保を10年来支援。ヘルパーたちは、家族とも関係性を築き、池本を粘り強く支えている。他、NHK『バリバラ』でコメンテーターを務め、障害者リーダーとしてアメリカへ旅立つ大橋ノア、積極的に地域に出て子どもたちの交通安全のために旗振り運動をする当事者たち、自立生活をサポートする介助者たちの姿をカメラは映していく。先天的なものだけでなく、病気や事故などにより様々な障害を抱えながら、家族の元や施設ではなく、自立生活を希望する人たち。自由と引き換えに、リスクや責任を負うことになる自立生活は、彼らにとってまさに命がけのチャレンジである。家族との衝突、介助者とのコミュニケーションなど課題も多く、時に失敗することもある。しかし、自ら決断し行動することで、彼らは確実に変化をしていく
スタッフ
監督、撮影
田中悠輝
撮影、編集、構成
辻井潔
撮影
岩田まき子
撮影
小角元哉
音楽
ガナリヤ、サイレントニクス
音楽
cloud nine(9)
プロデューサー
鎌仲ひとみ
Re-recording Mixer
引間保二
Color grading