第31回東京国際映画祭東京ジェムストーン賞をはじめ各国の映画賞を受賞したヒューマンドラマ。1980年代のベトナム、サイゴン。取り立て屋のユンは、伝統歌舞劇カイルオンの花形役者リン・フンと出会う。二人は次第に打ち解け、家族について語り始める。出演は、本作がデビュー作となるリエン・ビン・ファット、ベトナムのアイドルグループ・365dabandの元メンバー、アイザック。監督は、本作が長編デビュー作となるレオン・レ。
ストーリー
1980年代のサイゴン。借金の取り立てを生業とするユン(リエン・ビン・ファット)は、返済が遅れた客には暴力も厭わず、“雷のユン兄貴”と恐れられていた。ある日、ベトナムの伝統歌舞劇であるカイルオンの劇場に借金の取り立てに行き、団長が「支払えない」と言うと、舞台衣装にガソリンをかけ燃やそうとする。劇団の若きスター、リン・フン(アイザック)が止めに入り、自らの腕時計と金の鎖を差し出すが、ユンは受け取らず無言のまま立ち去る。翌晩、ユンはカイルオンの『ミー・チャウとチョン・トゥイー』を観劇し、悲恋物語の主役を演じるリン・フンの美貌と歌声に魅せられる。ある日、町の食堂でリン・フンが一人で食事をしていると、酔っ払いに絡まれる。偶然居合わせたユンが加勢し、酔っ払いを追い払うが、リン・フンは昏倒してしまう。リン・フンはユンの家で目覚めると、その夜の芝居に穴をあけてしまったことを後悔し、急いで出ていくが、鍵をなくしたことに気づいて戻ってくる。テレビゲームに興じるうちに二人は打ち解けるが、停電になり、仕方なく外に出る。屋台で麺を食べながら、リン・フンは流しの老人の歌に自分の人生に重なると言う。ユンは父がカイルオンの伴奏者だったと語る。驚いたリン・フンは、役者になることを反対していた両親が、やがて許してくれたが、初主役の舞台を観に来る途中、バスの事故で死んでしまったと語る。リン・フンはユンの机から、自分も好きな本を見つける。そこには詞の書かれた紙が挟まっていた。ユンは、それは父が書いたもので歌ってほしいと言うが、リン・フンは伴奏がなければ歌えないと答える。するとユンは、箱から民族楽器ソン・ランを取り出す。リン・フンはユンの伴奏で歌う。それは、妻に去られた男の苦しみを歌っていた。ユンの腕前に感心したリン・フンは、家業のカイルオンの道に戻ることを勧めるが……。
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