星能豊
私
日本芸術センター第10回映像グランプリでグランプリ受賞。「多摩川サンセット」「サヨナラ、いっさい」など多数のインディペンデント映画を発表してきた渡邉高章監督の劇場公開デビュー作。「夫婦」をテーマに、ラブストーリー、ホラー、サスペンスと、ジャンルレスな物語が進行する。葬式の帰りに土手沿いに住む「女」に会いに行った小説家の「私」は、帰る場所もわからず、「女」の家に居座ることになった。彷徨う男の日常のモノローグか、それとも、どこかにいる一組の夫婦の再生の物語か。鍵盤のメロディに導かれるように、モノクロームの世界で男と女は再会する……。渡邉監督は、自身が置かれている環境や日常的に目にする風景からいつも映画の題材をとり、本作も自分が結婚しなければ生まれなかったと明かし、ある種の境界線として「川」や「土手」をモチーフにすることも多く、その世界観に浸食されていったような感じだと語っている。星能豊とカイマミがダブル主演を務め、渡邉監督作品の常連俳優である星能は、本作の「私」役の演技によって、第5回 富士湖畔の映画祭 2019で主演俳優賞を受賞した。そのほか、舟見和利、小林美萌、狗丸トモヒロ、佐藤勇真、由利尚子、松井美帆が出演。音楽は、映像や舞台のみならず『ドラゴンボール改』などTVアニメにも楽曲提供をしている音楽家の押谷沙樹。その後、海外映画祭を巡業、アメリカ、ロシア、イギリス、ルーマニア、フィリピン等で上映され、受賞を重ねている。
小説家の「私」は、葬式の帰りに「高橋」に誘われて、土手沿いに住む「女」の元に行く。「私」は目覚めると、帰る場所もわからず、「女」の家に居座ることになる。思い出せない記憶、不味い食事、ぬるい風呂……輝きを失ったこの世界にはルールがあった。
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