2015年、東欧ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”で実際に起こった火災事件を発端に、製薬会社や病院、長期政権に連なる癒着と腐敗の真実が暴露されていくドキュメンタリー。火傷で入院した人たちが次々に細菌感染で亡くなっていったその原因とは……。ルーマニアの国外で治療された患者は助かり、国内の病院で軽傷だった患者が亡くなる事実に不審を募らせたスポーツ新聞の記者がいた。その地道な調査報道に密着取材を願い出たのは、「トトとふたりの姉」のアレクサンダー・ナナウ監督。映画の後半では熱い使命を胸に就任した30代の新大臣を追い、異なる立場から大事件に立ち向かう人たちを捉えている。まるでリアルな「スポットライト 世紀のスクープ」だとも評される本作は、命の危険を顧みず真実に迫ろうとする人たちの奮闘に思わず手に汗握るだけでなく、日本をはじめ世界中のあらゆる国が今まさに直面する医療と政治、ジャーナリズムの問題に真っ向から迫っている。「メディアが権力に屈したら、権力は国民を虐げる。それがこの国と世界で繰り返されてきたことだ」と語るスポーツ新聞編集長の気概に満ちた言葉が見る者の心に突き刺さる。ドキュメンタリーでありながらアカデミー賞のルーマニア代表として選出され、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たしたほか、世界各国の映画祭で28の賞を獲得した。
ストーリー
2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始めるが、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが……。
スタッフ
監督、脚本、製作、撮影、編集
アレクサンダー・ナナウ
脚本
アントアネタ・オプリス
製作
バーナード・ミショー
製作
ハンカ・カステリコヴァ
製作
ビアンカ・オアナ
製作総指揮
フィリッパ・コワルスキー
共同製作、音響
ミハイ・グレチャ
音楽
カヤン・バヤニ
編集
ゲオルグ・クラッグ
編集
ダナ・ブネスク
音響
アンジェロ・ドス・サントス
音響
ミシェル・シリング
音響
フロリアン・ティトゥス・アルデレアン
コラム・インタビュー・イベント
ニュース
作品データ
- 原題
- Colectiv
- 製作年
- 2019年
- 製作国
- ルーマニア=ルクセンブルク=ドイツ
- 配給
- トランスフォーマー
- 初公開日
- 2021年10月2日
- 上映時間
- 109分
- 製作会社
- Alexander Nanau Production=Samsa Film=HBO Europe
- ジャンル
- ドキュメンタリー
[c]Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019
[c]キネマ旬報社