文化庁の助成を受け、越前市、越前町を舞台に和紙職人の世界を描いた短編映画。美大で水彩画を専攻しながらも、一つの賞も取ることができず、自信を失っていた岩崎奈津は、和紙職人の祖父・順二が骨折したことをきっかけに、12年ぶりに故郷・越前に帰る。出演は「20歳のソウル」の石崎なつみ、新人の葉月りん、『ちびまる子ちゃん』のキートン山田。
ストーリー
美大で水彩画を専攻した岩崎奈津は卒業後、一つも賞を取ることができず、24歳になった今、すっかり自信を失っていた。父の転勤で現在は家族と東京で暮らしているが、元々は越前和紙の町に生まれ、子どもの頃は和紙職人の祖父・順二の漉いた和紙に伸び伸びと絵を描き、県知事賞を取ったこともあったのだ。そんなある日、越前市で一人暮らしを送りながら、80歳になっても手漉き和紙の製造を続ける順二が骨折したとの知らせが入る。その日常生活をサポートするため、奈津は12年ぶりに越前に戻ることに。順二と暮らし始め、越前和紙文化の衰退を目の当たりにする奈津。原料農家の廃業、身体の不自由な順二に無理を言って和紙を求める浮世絵の摺師……。何とか和紙製造に復帰しようと、順二は高齢の身体に鞭打ってリハビリを進める。奈津はその情熱の源を“仕事好き”と捉えていたが、順二によると“好きかどうかではなく、やるべきことをやっている”、“何千年も残るものを作る責任を果たしている”だという。1500年にも及ぶ越前和紙の歴史に触れ、ますます無力感を覚える奈津。そんな時、東京でアイドルグループの一員として活躍する妹・凛のスキャンダルが発覚。騒動から逃れるように、凛もまた越前にやってくる。傷心の中、“まだ自分が歌いたい歌は歌えていない”と語った凛が、やがて内側からほとばしる歌を力一杯歌うのを聴いた奈津は、自分も同じように輝きたいと願う。その時、順二の和紙製造の技法を受け継ぎ、その紙に自分の絵を描くことこそ、自分のやるべき事だと気づく。こうして技術の習得を申し出た奈津は、順二から和紙製造の指導を受けながら、再び絵筆を手に取るのだった。
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