リンダ・ブレア
Doris
愛を求め、報いられることのなかった恋人達の物語。製作はジョージ・バリー、監督はリー・フィリップス、脚本はエドワード・ヒューム、原作はナサンエル・ベンチリー、撮影はリチャード・C・グルーナー、音楽はルチ・デ・ジーザスが各々担当。出演はリンダ・ブレア、マーティン・シーン、ジーン・クーパー、リー・デブロー、バート・レムゼンなど。
東部の精神病院を脱走したハッチ(マーティン・シーン)には、夢があった。一方、ニューメキシコのある町で、ガラガラ蛇のしっぽを集めている娘ドリス(リンダ・ブレア)は、これが幸福を呼ぶおまもりと信じていた。ある日、町からの買い物の帰り、車がエンストしたドリスは、運よく通りかかった車に乗せてもらう。運命の時が来た。運転していたのは、ハッチ。逃亡の旅の途中だった。2人を乗せた車はドリスの家をも素通りし、やがて、静かな森の中へと入っていく。着いた所は貧しい小屋だった。「ザナデューの宮殿へようこそ」、ここはハッチの夢の世界だ。一方、町ではドリスの失踪が話題になっていた。ドリスを小屋に縛りつけ、日用品を買いに町へ出たハッチは、酒場で、「そういえば、娘が男に連れられアルバカーキへ向かったのを見た」と、偽りの証言をする。小屋では、ナワをほどいたドリスが、オノを片手にハッチの帰りを待った。その姿を見、悲しげな表情のハッチ。彼の買って来た水色のドレスを着、素敵な食事と踊りと、幸せを初めて味わうドリス。だが、捜査は続いた。そして、ドリスのたのんだカーテン地により、犯人と見破られたハッチは、ドリスの裏切りを怒った。でも彼女にはそんな気はなかったのだ。今はもう彼から離れられない。彼女は彼に詩を捧げた。やがて、小屋が夜の闇に包まれる頃、銃を片手にした町の保安官達が、2人の幸せを引き裂いた。「逃げて!」ドリスの声がふるえた。「泣くんじゃない。目をつぶって、星を見るんだよ」、一発の銃声が森の中にこだまし、行きずりの娘に愛と夢を見ることを教えた若者の命が消えた--。
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