2011年3月に起こった福島第一原発の事故によって全村避難を余儀なくされた福島県相馬郡飯舘村。その村で酪農を営んでいた3人の女性たちの10年間を追ったドキュメンタリー。飯舘村を離れた人、戻った人など、一人ひとりが大きな人生の選択をするなか、牛(べこ)とともに生きてきた「母ちゃん」たちもどん底の思いをしながら、それぞれが悩み、苦しみ、ときには笑いながら生きてきた。その強さと逞しさに惹かれたのはパレスチナの女性たちの取材を長年続けてきた「ガーダ パレスチナの詩」の古居みずえ監督。福島に拠点を構え、「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」に続き、故郷、生業、家族のはざまで揺れる飯舘村の女性たちの心情を丁寧に描き出す。「第1章 故郷への想い」「第2章 べことともに」「第3章 帰村」の全3章で構成。
ストーリー
【第一章「故郷への想い」】戦後、両親が開拓した土地で45年もの間、酪農と繁殖の仕事に携わってきた中島信子さん。手塩にかけた牛を泣く泣く手放し、隣市の仮設住宅に避難。週の半分、夫とともに飯舘村へ通いながら、故郷に戻れる日を待ち続けていた。年々募っていく故郷への思い、かつての暮らしへの郷愁。しかし、除染作業後も下がりきらない放射線量と、石まじりの砂が撒かれた畑を前に気持ちが揺らぎ始める。【第二章「べことともに」】酪農と繁殖農家としてたくさんの子牛を育ててきた原田公子さん。仲間たちが廃業を選択する中で、自分の意思をつらぬき牛とともに新たな土地に移る。放射能の心配はなくなったが、新生活には別の不便や苦労も。時にぶつかりあいながら、夫と二人三脚で牛飼いの道を歩む公子さん。彼女が決して牛を手放さない背景には、事故当時に十分な世話ができず死なせてしまった牛たちへの後悔の念があった。【第三章「帰村」】酪農家として義両親と夫、息子家族の8人で暮らしてきた長谷川花子さん。息子家族と離れ、仮設住宅で義両親と4人暮らしに。飯舘村に帰りたい義母、花子さん夫妻に任せると言う義父、息子家族と一緒に暮らしたい夫。それぞれの思いが交錯するなか、飯舘村への帰村を決意。先祖代々の土地と故郷を守るため、新たなチャレンジに取り組み始めた矢先、夫が病に倒れる……。
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