ティンカ・メンケス
Ida
ある娼婦が生きる世界と内面を描いた、孤高の映画監督ニナ・メンケスの初長編映画。1980年代初頭から独自の美学を貫き通し、世界の映画祭でますます評価を高めるニナ・メンケスの代表作3本(本作と「クイーン・オブ・ダイヤモンド」「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」)がそろう特集上映「ニナ・メンケスの世界」にて2024年5月10日、日本初公開。主演は、メンケスの5本の映画に出演した最大の協力者にして実の妹、ティンカ・メンケス。
殺人の容疑で、ひとりの娼婦が捕まった。彼女の名前はアイダ、そしてこうも呼ばれる──マグダレーナ・ヴィラガ。刑務所を、ネオンがきらめくダンスホールを、プールサイドを、彼女が長い時を過ごす寝室(ブドワール)を横断し、時系列を曖昧にしながら、映画は女の肉体的、精神的な細部をとらえ、孤独な<囚われの女>アイダが生きる血濡れた世界と、内なる心の世界を描き出してゆく。静かに沈んだブルーの映像のなか、いくつかの言葉は何度も祈りのように繰り返され──私はここにいる、私はここにいない、私を絶対に縛らないで──突き刺すような美しさとなって燃え上がる。
[c]1986 Nina Menkes
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