【今週の☆☆☆】交代劇に隠されたドラマ『2人のローマ教皇』にブロードウェイ上演の大ヒットコメディ…週末観るならこの作品!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週も、映画ライター陣が”いまこそ家で観たい”オススメ映画をピックアップ。フェルナンド・メイレレス監督が描くローマ教皇の意外な交代劇や名脇役ジョン・レグイザモの白熱の一人舞台など、バラエティあふれる2作品がそろった!
現ローマ教皇と前教皇の知られざる対話とは…?『2人のローマ教皇』(Netflixにて配信中)
これまでもバチカンやカトリック総本山は、“知られざるミステリアスな世界の象徴”として、度々ハリウッド大作にも登場してきた。だが近年、『ローマ法王の休日』(11)、『ローマ法王になる日まで』(15)、『ローマ法王フランシスコ』(18)など、現教皇フランシスコや彼と思しき人物が主人公の映画が続々と作られていることからも、彼の人気や影響力の大きさがうかがい知れる。今度は『シティ・オブ・ゴッド』(02)のフェルナンド・メイレレス監督が、フランシスコが前教皇からその座を受け継ぐまでの“予想外ないきさつ”を描き出した。
カトリック教会の方針に疑問を抱き辞意を表した、進歩派のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(ジョナサン・プライス)。保守派のベネディクト教皇(アンソニー・ホプキンス)は辞意を認めず、逆にローマに呼び寄せる。そこで二人は何を話し合ったのか――。考えを完全に異にする二人が、静かな、時に熱くなる対話を通して、また沈黙や不在という饒舌な意思伝達を通して、カトリック教会の未来について理解し、つながれていく過程に、なぜかしみじみと目頭が熱くなる。そして、なるほどぉ、と深い嘆息が漏れる。(映画ライター・折田千鶴子)
名優レグイザモの白熱のパフォーマンス!『ジョン・レグイザモのサルでもわかる中南米の歴史』(Netflixにて配信中)
Netflixにはスタンダップコメディ系が充実しているが、本作はその中でもブロードウェイの劇場で一人芝居の形式で上演された大ヒット作。ラティーノ系の移民であるジョン・レグイザモが講師役を買って出て、自身のルーツである中南米の歴史を、おもしろおかしく解説してくれるのだ!
レグイザモにはハリウッド映画でちょっとクセのあるラテン系のサブキャラを一手に引き受けている名脇役のイメージがあるが、そもそもがスタンダップコメディの出身で、自作自演の舞台でエミー賞に輝いたこともある。つまり、われわれが映画で観てきた印象よりもはるかに大物なのだ。
大学の研究室のような舞台に一人で現れたレグイザモは、下ネタギャグ満載で難しい話をやわらかく教えてくれる。いや、これは講義なんかじゃない。マイノリティとして差別されてきたラティーノ系の現実を、レグイザモ自身のパーソナルな物語に置き換えて伝えてくれる本気のアジテーション(扇動)だ。
レグイザモの白熱のパフォーマンスを観れば、これからアメリカ映画を観る時に、ラティーノ系の登場人物への見方がきっと変わりますよ!(映画ライター・村山章)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!