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三宅唱監督版「呪怨:呪いの家」は既存作品をどう違う?一瀬プロデューサーと監督が明かす

インタビュー

三宅唱監督版「呪怨:呪いの家」は既存作品をどう違う?一瀬プロデューサーと監督が明かす

「残酷描写をどこまでやるべきか、非常に悩みました」(一瀬)

【5月12日(火)AM8時解禁】『呪怨:呪いの家』場面写真⑤
【5月12日(火)AM8時解禁】『呪怨:呪いの家』場面写真⑤

キャスティングも絶妙だ。まずは、主要キャラクターである心霊研究家の小田島演じる荒川良々の目が怖い。てっきりコメディリリーフかと思ったら大間違いのキャラクターだ。怪奇現象に怯えるはるか役の黒島結菜の美しい面差しも、見ただけで心がざわめく。続いて転校生の女子高生、聖美役の新進女優、里々佳が新たな“絶叫クイーン”として存在感を発揮していく。

荒川のキャスティングについて一瀬プロデューサーは「Netflixだからできたことかなと。たぶん映画会社やテレビ局なら、イケメンの人気俳優を使えと言われます(苦笑)。イケメンが悪いわけじゃないけれど、芝居が“イケメン”になってしまうと今回は困る。実は小田島のキャスティングが一番悩みましたが、たまたま(NHK大河ドラマの)『いだてん〜東京オリムピック噺〜』を観ていて、『この人だ!』と思ったんです。荒川さんとは過去に何度かお仕事していますが、どんなにコミカルなことをやっても目が笑ってないところが魅力的だと思っていたので」。

三宅監督も「僕もそれを聞いて、すごくいいアイディアだなと思ったし、実際にキャスティングできて、本当に良かったなと思いました」と御の字だ。「荒川さんは、大変勘の鋭い方で、言葉数を重ねなくても、直感的に僕のイメージした小田島像をすぐにわかってくれたので必要以上の説明はいらなかったです。仕事も非常に楽しかったですね」。

ヒロインの1人、聖美役を演じた里々佳も本作で注目されそうだが、彼女はオーディションで選んだのだと、一瀬プロデューサーは語る。
「『呪怨』は、最初のビデオ版が一番怖いと言われています。なぜなら、あまり知らない俳優が出ているからということも大きい。だからといって無名の方たちだけで作るわけにはいかないので、実力のある役者を核になるキャラクターにキャスティングしたうえで、オーディションもたくさん行いました。直感的に、彼女が聖美役に一番合っている気がしたし、すごくやる気も感じました」。

Netflixオリジナルシリーズ「呪怨:呪いの家」は7月3日より全世界独占配信
Netflixオリジナルシリーズ「呪怨:呪いの家」は7月3日より全世界独占配信

三宅も「キャスティングについては、僕も意外と直感でわかるものだと思っています。また、とことんこだわるポイントでもあります」と同意する。「敢えて言葉にするなら、里々佳さん独特の華と、ある種の繊細さですね。聖美という役はやりがいがあるけれど、年齢幅のある難しい役でもありました。しかし、彼女は最初から最後まで歯をくいしばって頑張ってくれたんです」。

そして、手練れのホラーファンをもうならせるおぞましいシーンが果敢に描かれているのは、クリエイティブファーストで知られるNetflixならではだろう。一瀬プロデューサーは「サブスクリプションサービスの配信作品は、最初の3~4分を観られた時に、そこから継続して視聴してくれるかが勝負となります。今回は190か国以上のいろんな年齢層に向けて、恐怖描写をどこまでやるかという部分はすごく考えました」と告白。

「あまり表現を丸くしすぎると、ホラーファンが観てくれないし、ハードすぎても離脱されるだろうし、その境目はどこなんだろうと。映倫なら『これはダメ』というガイドラインがはっきりしているから、やるやらないという基準をそのガイドラインから判断できますが、今回はできないので、非常に悩みました。そのため、Netflixのプロデューサーたちと残酷描写に関しては、細かく話し合いました」。

三宅監督はNetflixの製作方針について「ものすごく先進的かつ、ある種リベラルな会社であるNetflixが、映画の本質的な部分、もっといえば人間の本質を描くことを捨てずにいることに今回気がつきました。いかがわしさを切り捨てず、遡上にあげようとしているのでは」と、作り手の立場から持論を述べる。

「Netflix作品では、これまでもセンセーショナルな題材を扱ってきていますが、そこにはNetflixなりのポリシーがあって、その基本には映画愛があると思うんです。そこがNetflixさんの独特さなんじゃないかな」。

最後に、三宅監督に本作の見どころを聞いた。「エピソードごとに全然違うタイプの怖さが展開されます。そしてエピソード6では、それらが折り重なって、恐怖が大集合して襲ってくるというとんでもない構成になっています。僕は特にエピソード6が大好きなので、最後まで目をそらさないで見てほしいですね」。

取材・文/山崎伸子

Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』(全6話)
監督:三宅唱
出演:荒川良々、黒島結菜、里々佳、長村航希、岩井堂聖子、井之脇海、テイ龍進、松浦祐也、土村芳、柄本時生、仙道敦子、倉科カナほか
脚本:高橋洋、一瀬隆重
エグゼクティブ・プロデューサー:山口敏功(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)  坂本和隆(Netflix)
プロデューサー:一瀬隆重、平田樹彦
音楽:蓜島邦明 撮影:四宮秀俊 照明:永田英則 美術:尾関龍生、録音:小松将人
音響効果:柴崎憲治 編集:深沢佳文 視覚効果:松本肇、特殊造型:スクリーミング マッド ジョージ
配信:7月3日よりNetflixにて全世界独占配信中
www.netflix.com/ju-on_origins
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