【追悼】半世紀以上にわたり映画を彩ったマエストロ、エンニオ・モリコーネが死去
『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)をはじめ、数多くの映画作品で作曲を担当してきた映画音楽の世界的巨匠エンニオ・モリコーネが現地時間6日、ローマ市内の病院で亡くなった。現地メディアの報道によれば、モリコーネは数日前に転倒し大腿骨を骨折し、療養のために入院中だったとのこと。91歳だった。
1928年11月10日にローマで生まれたモリコーネは、6歳の頃から作曲を始め、名門サンタ・チェチーリア音楽院を卒業後は演劇やラジオの作曲家として活動を開始。50年代中頃からほかの作曲家をサポートするかたちで映画音楽に参加するようになり、ルチアーノ・サルチェ監督の『ファシスト』(61)で正式に映画音楽の作曲家としてデビューを飾る。
その後は小学校時代の同級生でもあったセルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』(65)や『続・夕陽のガンマン』(66)に代表されるマカロニ・ウエスタン作品で名を馳せ、ほかにもベルナルド・ベルトルッチ監督やマルコ・ベロッキオ監督、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督、ダリオ・アルジェント監督ら名だたる巨匠たちの作品に参加。70年代後半ごろからはイタリア国外の作品にも携わるようになり、世界的な知名度を獲得することに。
テレンス・マリック監督の『天国の日々』(78)でアカデミー賞作曲賞に初めてノミネートされたモリコーネは、以後『ミッション』(86)、『アンタッチャブル』(87)、『バグジー』(91)、『マレーナ』(00)でも同賞にノミネートされるがいずれも受賞には至らず。2007年に長年の功績が認められ、アカデミー賞名誉賞を受賞すると、モリコーネを敬愛するクエンティン・タランティーノ監督が手掛けた『ヘイトフル・エイト』(15)で悲願のアカデミー賞作曲賞を受賞。モリコーネの名前が読み上げられると、会場中はスタンディング・オーベーションに包まれていた。
モリコーネの映画音楽を語る上でもっとも欠かせない作品は、やはり『ニュー・シネマ・パラダイス』であろう。アカデミー賞外国語映画賞に輝き、いまなお世界中の映画ファンから愛されつづける同作で初めてタッグを組んだモリコーネとジョゼッペ・トルナトーレ監督。その後『海の上のピアニスト』(98)や『鑑定士と顔のない依頼人』(13)など、トルナトーレ監督が手掛けた長編映画はすべてモリコーネが作曲を担当。またトルナトーレ監督は現在、モリコーネにフォーカスしたドキュメンタリー映画『Ennio: The Maestro』を編集中で、同作は8月にイタリア公開が予定されている。
突然の訃報を受け、多くの映画関係者や作曲家たちが哀悼の意を表明。以前モリコーネとコラボレーションを果たしたチェロ奏者のヨー・ヨー・マは、自身のTwitterで『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマを演奏する動画を公開。作曲家のハンス・ジマーや、モリコーネが作曲を務めた『アタメ!』(90)に出演したアントニオ・バンデラスらも追悼メッセージを投稿している。半世紀以上にわたり、数えきれないほど多くの名曲で映画を彩ってきたマエストロのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
文/久保田 和馬