「今回は最初から走るぞ!」水谷豊&反町隆史が「相棒」ファンへのサービスを語る!
前作から約3年――4代目相棒・冠城亘を迎えた初の劇場版となるシリーズ第4弾『相棒-劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』(2月11日公開)。杉下右京役の水谷豊と、4代目相棒・冠城亘を演じた反町隆史に、ドラマとはひと味違う舞台裏や役に込めた思いを語ってもらった。
法務省からの出向で特命係にやって来た冠城亘(season14)。season15から正式に警視庁に入庁し特命係となった、元キャリア組の巡査という異色の“相棒”だ。そんな冠城亘との関係について「プライベートと一緒」と水谷は語る。
「僕がソリ(反町)と仕事をするのは、相棒が初めてだったんですね。変化していく距離感や会話の“間”は、ドラマの中と外で同時進行しています」。一方の反町は「右京さんと水谷さん、どちらも僕にとっては大先輩。去年より今年、そして劇場版と、相棒と呼ばれるにふさわしい存在を目指し、経験を積んでいます」とその胸の内を語る。
今作で右京と冠城は、国連犯罪情報事務局の元理事マーク・リュウと共に、日本に潜入した国際犯罪組織バースの行方を追いかける。多くの映画やドラマを経験してきた水谷だが、リュウ役の鹿賀丈史とはこれが初共演。「実は鹿賀さんがまだ劇団四季にいらした20代の頃に、舞台を見ているんです。あの時の印象が強烈に残っていまして。今回鹿賀さんにお会いしたら髪が真っ白になられていて、何だか歴史を感じましたね。とても楽しくお仕事をさせていただきました」と感慨深げだ。
ドラマのテイストはそのままに、映画ならではの見せ場を盛り込んできた劇場版シリーズ。今作でまず注目したいのがアクションだ。反町は「法務省出身なので、強くもなきゃ弱くもないのが冠城亘」としながらも、クライマックスでは北村一輝が演じる黒衣の男とアクションを展開する。「北村さんは普段からトレーニングをされているようで、すごくガタイがいいんです。僕より一回りは大きいので、逆に言えば立ち向かい甲斐がありましたね」と振り返る。
アクションに関して、反町は、水谷の機敏さに舌を巻いたという。「水谷さんは足が本当に速い。僕も普段から走っていますけど、気づくと水谷さんが先を走っているんです。さすが陸上をやっていただけはありますね」と反町。オープニングから各所で全力疾走を披露した水谷は、それらがファンへのサービスでもあったと語る。「ファンの方から『右京が走る姿を見たい!』という声が多いんです。ですから、今回の劇場版では最初から『走るぞ!』と思っていました。観に来ていただいた方々をがっかりさせたくないですからね」。
劇場版ならではのスケールを味わえるのが、世界スポーツ競技大会のメダリスト凱旋パレードのシーンだ。撮影は、北九州市小倉駅周辺の目抜き通りで、6車線の大通りを封鎖して行われた。「すごい迫力で驚きました」と語る水谷は、その舞台裏について「実は2度も雨で撮影が流れ、あれが3度目だったんです。毎回3000人ものエキストラの方々が集まってくれるので、今度もダメだったらどうしようという、映画とは別のサスペンスを味わいました」と振り返る。反町は「フィルムコミッションの方をはじめ、多くの方の協力に感動しました。水谷さんが登場するとエキストラの方々が一斉にこちらを見てしまうので、スタッフは大変そうでしたよ」とスタッフをねぎらった。
「相棒」ファンにとって、劇場版の楽しみのひとつが歴代キャストのゲスト出演。今作では、及川光博演じる“2代目相棒”の神戸尊が特命係をサポートする。「及川さんの時代も(視聴者として)見てましたから、何だか不思議な感覚でした。歴代相棒がそろう姿は、まるで“ウルトラ兄弟”がそろったみたいですね」と反町。
一方の水谷は、右京の本音を明かしてくれた。「表情にこそ出しませんが、右京は神戸くんに会うのがとてもうれしいんですよ。それと米沢さん。ダメだと思いつつ、右京のことが好きなのでつい協力してしまう。それをわかった上で会いにいく、右京との関係も楽しいですね」。
そんな特命係が今作で暴くのは、国家が闇に葬り去ろうとした“真実”。「社会派でありエンタテインメントでもありますから、どちらも味わってほしい」という水谷は、「今回でいえば歴史の裏側で苦悩した人たち。哀しみ、怒り、愛、いろいろな思いに葛藤しながら、それでも人は前に進まなければいけません。日本人として忘れてはいけない部分を盛り込むのも『相棒』らしさでしょうね」と作品に込めた思いを語る。反町は「危機管理の大切さを考えさせられた」という。「いまや無差別テロはどの国でも起きています。情報の悪用など犯罪の質が変わるなか、自分で身を守ることも大切なんですね」。
脚本を手掛けたのは、シリーズやスペシャル版を手がけてきた太田愛。「女性らしい名前とは裏腹に、男の世界をきちんと書ける方」と水谷が絶賛する実力派だ。哀しき歴史の闇に挑む今作で、改めて事件に臨む姿勢に心を打たれたという。「事件に立ち向かった時、2人は絶対にあきらめません。それが警察官としての使命ですからね」。一方で反町が魅せられたのは右京のこだわり。「時と共に犯罪が風化する風潮のなか、右京さんはコツコツとその本質を掘り起こすじゃないですか。見えない真実を代弁するその姿こそ、『相棒』の本質だと思います」。
ドラマでもプライベートでもその距離感は同じと水谷が語ったように、杉下右京と冠城亘のまま、絶妙の間で語る水谷と反町。劇場版最新作はせつない物語だけでなく、いまだ進化を続ける2人の新たな一面にも注目してほしい。【撮影/中野修也 取材・文/神武団四郎】