ディズニーが海外向けの配信サービス「Star」を準備中!インド、シンガポールでは今年サービス開始
アメリカ西海岸時間8月4日に行われたウォルト・ディズニー社の第3四半期決算発表でボブ・チャペックCEOは、2021年に海外市場に向けてABC、サーチライト・ピクチャーズ、FX、Freeform、20世紀スタジオの作品を配信するサブスクリプション・サービスを開始する準備があると発表した。このニュースは、同日に発表された新作映画『ムーラン』を9月4日よりアメリカ国内ではディズニープラスを通じ、プレミアム価格の29.99ドルで配信し、ほかの地域ではディズニープラスで配信もしくは劇場公開するという報道にかき消され気味だが、海外にとっては大きなニュースだ。
新しいストリーミング・サービスは「Star」という名前で、元々はインド発のサブスクリプション・サービスを20世紀フォックスが子会社化していたが、ディズニーと20世紀フォックスが買収合併合意したことにより、ディズニー傘下に入ることになった。ディズニー社はHuluではなくStarブランドを用いて海外市場展開していく予定で、Disney+より一般的な視聴者に向けた作品を扱うという。インドでは4月よりディズニープラスとStarが運営するHotstarを組み合わせたプランを開始していた。今後Starがどの国でサービスを開始するかといった詳細の情報は出ていないが、インドのStarとディズニープラスを合わせたサービスのHotstarはシンガポールで年内開始予定だそう。また、米国のHuluが多くのライセンス・コンテンツを含むのに対し、Starではディズニー社が権利保持する作品のみの配信になるという。
ディズニー社の第3四半期決算発表によると、新型コロナウイルスのパンデミックにより現在までに一部のみの再開にとどまっているテーマパーク事業(ホテルや関連事業、ライセンス商品売上も含み)がマイナス85%、エンターテイメント事業では映画の劇場公開の度重なる延期、舞台公演の中止などがマイナス55%となっている。
北米における『ムーラン』のDisney+での配信は、ニュースが流れた瞬間から多くのメディアで取り上げられ、ディズニー社が劇場公開ではなく、現時点で収益が見込める配信事業に舵を切るのではないかという憶測も流れた。投資家向けの会見でボブ・チャペックCEOは、「『ムーラン』配給の劇的な変更はパンデミックの間に必要な動きであり、当社の新しいビジネスモデルを反映したものではない。ここから学び、実際の配信数を確認したい。(配信することにより)投資の一部を取り戻すチャンスを与えてくれる。この映画の製作費は2億ドルで、世界規模でのマーケティングとプロモーションにはさらに数百万ドルが必要だった」としている。
なお、先月ニュースが流れたアメリカの映画館チェーンAMCとユニバーサル映画が、劇場公開から17日間でPVOD(プレミアム・ビデオ・オン・デマンド)で映画を配信し2社間で利益を配分する契約と異なり、ディズニー社のプラットフォームであるディズニープラスで配信されるため、プレミアム価格は全て同社の収入となる。
日本で配信が行われているHuluはライセンス契約で、ディズニー社が米国で行なっているHuluとは別のサービス。Starは今後どの地域で配信することになるのか、続報を待ちたい。
文/平井伊都子