「ドラえもん」レギュラーキャストが語る、声優交代から15年の歩み。年月を重ねて「家族的になってきた」

インタビュー

「ドラえもん」レギュラーキャストが語る、声優交代から15年の歩み。年月を重ねて「家族的になってきた」

「ドラえもん」レギュラー声優が大集合!
「ドラえもん」レギュラー声優が大集合!撮影/成田おり枝

「ドラえもん」のまんが連載50周年記念作にして、長編映画シリーズ40作目となる『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が、いよいよ8月7日より公開中だ。さらに今年は、2005年にメインキャラクターの声優陣が一斉に交代してから15年の“ミラクルイヤー”。MOVIE WALKER PRESSでは、ドラえもん役の水田わさび、のび太役の大原めぐみ、しずか役のかかずゆみ、ジャイアン役の木村昴、スネ夫役の関智一に集まってもらい、インタビューを敢行。前後編でたっぷりとお届けする。
15年の歩みを振り返ってもらった前編では、同志とも言えるメンバーとの絆、そして国民的キャラクターを演じる覚悟と責任感があふれだした。

本作は、のび太が双子の恐竜に出会うことから始まる物語。ちょっと頼りないキューと、おてんばなミューを愛情たっぷりに育てるのび太だったが、現代で2匹が生きていくには限界がきてしまう。キューとミューを白亜紀に返すことを決心したのび太は、ドラえもんや仲間たちと、6600万年前へと出発。そこで謎の島を見つけたのび太たちが大冒険を繰り広げることになる。

「14歳で役をいただいて今年30歳。人生の半分がジャイアンです(笑)」(木村)

ーー皆さんが国民的キャラクターのバトンを受け取ってから、15年が経ちました。抜てきされたプレッシャーも大きかったかと思いますが、15年のなかで「自信がついてきた」と感じることや、転機だと思った出来事はありますか?

水田「私は抜てきしていただいた当初は、実はプレッシャーを感じていなかったんです。なにもわかっていなかった。それが年々、プレッシャーを感じてきている状況です。やっぱりドラちゃんをやっていると、いろいろなお仕事に携わる機会が多いので、そのたびに『大変なことをやっているんだ…』とハッとします。私にとって大きかったのは、かべさん(先代のジャイアン役、たてかべ和也さん)のお言葉。私は舞台に立っていたころ、かべさんに拾っていただいた人間です。ドラちゃん役に決まった時は『発表まで誰にも話してはいけない』と言われていましたが、発表された際にはかべさんが一番に電話をしてきてくださいました。かべさん、朝が早いんですよ(笑)!朝刊を見てすぐに連絡をくれて、『わさびちゃんらしくやりゃあいいんだよ』と言ってくださった。プレッシャーを感じるようになっても、『そうだ、個性を大事にするんだ』と思わせてくれる。かべさんのその言葉は、いまでも脳内再生されます」

大原「私は10年目くらいにやっと『のび太くんとシンクロできたかな』という実感を得られるようになりました。シンクロするまでは『これでいいのかな』と自分のなかでも答えが見つからず、自信がなくて、いつも正解を探りながらやっていたように思います。劇場版の収録をするたびに力をもらうこともありましたし、また10周年を記念したトークショーで、先代の小原乃梨子さんから『10年続けたら本物』と言っていただいたことも、すごく力になりました。のび太くんを演じていると、子どもたちとの距離がグッと縮まるんですよ(笑)。子どもたちがなついてくれたり、親しみを持って話しかけてきてくれる。のび太くんって、そういう子だと思うし、本作は『だからこそ、しずかちゃんは結婚してくれたんだな』というところにもつながるお話で!彼のいいところがギュッと詰まった物語です。私自身、どんどんのび太くんの魅力を実感しています」

最新作にものび太くんの魅力がたっぷりと詰まっている
最新作にものび太くんの魅力がたっぷりと詰まっている[c]藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

木村「15年の間、僕も正解がわからないなかでやってきて、最初は不安もめちゃくちゃありました。自信の持ち方もわからないし、どうすれば立ち上がれるだろうと思った時に力になったのは、やっぱり観てくれている子どもたちの存在が大きいです。我々がバトンを受け取って15年が経ったと考えると、当時生まれた子どもたちが高校生になっているわけですよね。見てくれている子たちがいるのに、いつまでも悩んでいてはいけないなと。時間に勝るものはないというか、時間や年数が自信の証になるのだとすれば、堂々と思い切ってやらないといけないなと思っています。私事で言えば、14歳からジャイアンをやっていて、今年30歳になりますので、人生の半分がジャイアン。先日、うちの前を通った小学生が『ここ、ジャイアン家なんだぜ』と話していました(笑)。『ジャイアン』と言っていただけるのって、本当にうれしいんですよ。これからも張り切っていこう!と思っています」

かかず「私も10年くらいはずっと悩み続けていました。自分自身『ドラえもん』をずっと見てきたし、脳内にキャラクターの声も残っていますから、私がしずかちゃんの声をやるようになって、その違和感を一番覚えていたのは、自分かもしれません。でも昴くんと同じように、見てくれる子どもたちが力をくれる。知り合いのお子さんが『しずかちゃんに恋をしている』と言うんですよ!『しずかちゃん、大好き』と言ってくれて、その動画を携帯に保存しています。聞いてもらっていいですか?」

一同「(動画を見て)かわいい!かわいすぎるー!」

かかず「こういう子どもたちが育ってきていると思うと、すごくうれしくて元気になるんです。この動画、ずっと見ちゃうんですよ(笑)。また福山雅治さんがゲスト声優で出られた時には、『しずかちゃんは、理想の女性3人のうちのひとりに入る』とおっしゃっていて。そう言ってくれる方がいるのもすごくうれしいです。藤子・F・不二雄先生が生みだしてくださって、いまでもそうやって愛されているしずかちゃんは、優しくて女の子らしくて、しっかりしたところも持っている子。そこはブレずに演じていきたいですね。しずかちゃんは、いつも正義なんです。例えば『のび太さんは一緒に勉強をするタイプじゃないの、勉強をするなら出来杉さん』と言ってしまうような女の子ですが(笑)、これもすべて自分のなかの確信や正義から出ている言葉。嫌味な部分は一切ないので、そういった感情は持たないように心がけています」

大原「もちろんです!嫌味だなんて思ったことは一度もありません。しずかちゃんの言ってることは、いつも正しいと思っているので、しょんぼりしつつも受け入れてます(笑)」

関「スネ夫って、ドラえもんやのび太とはまた違う立ち位置なので、『こうあらねば』と強くプレッシャーに感じるというよりも、いつも『楽しんで演じていこう』と思っています。唯一プレッシャーを感じる部分があるとすれば、『ドラえもん』が大作だからではなくて、僕自身が『ドラえもん』を大好きだったからこそ、感じるものはありました。愛があったので、『自分が好きなものを大事にしたい』と。僕はスネ夫が大好きなんですが、それは『一番、スネ夫が普通の子どもだな』と感じるからなんです。“お金持ち”というキャラクターはありますが、みんなが『助けに行こう!』とヒロイックになっている時でも、怖がりで『もう現代へ帰ろうよ』というのはスネ夫(笑)。でもそれって、考えてみると普通なことで、僕はすごく共感できる。自慢しちゃったり、のび太くんをいじめちゃったり、調子に乗って怒られたり、自分より強い人には強く出られなかったり…。僕も心当たりがあるし、普通の子どもがみんな持っているものだと思うんです」

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