人気女優がナチスのスパイに…驚愕の実話を彩る1940年代ファッションに注目
第二次世界大戦中のナチス占領下のノルウェーで、人気女優がスパイとしてナチスに潜入したという驚愕の実話を描いた『ソニア ナチスの女スパイ』(公開中)。先日発表されたノルウェーのアカデミー賞であるアマンダ賞で衣装賞とメイクアップ賞の2冠を達成した本作の見どころのひとつは、やはり主人公ソニア・ヴィーゲッドのエレガントで華やかな1940年代北欧ファッションの数々。
ソニア役を演じたのは、HBOの人気ドラマシリーズ「ウエストワールド」にも出演するなど国際的に活躍するノルウェー出身女優イングリッド・ボルゾ・ベルダル。彼女はインタビューのなかで「当時だけでなく現代から見ても素晴らしく洗練された衣装で、ソニアを再現してくれました。第二次世界大戦を描いた作品で、本作のようにカラフルな作品は珍しいと思います」と衣装・ヘアメイクチームの働きを称賛。そこで本稿では、劇中に登場する魅力的なファッションの数々をあらすじと場面写真と共に紹介していきたい。
人気女優だから着こなせる、インパクト大のファースタイル
本作の主人公であるソニア・ヴィーゲッドは1913年にノルウェーに生まれ、20代前半で女優デビュー。その後スウェーデンの作家トルステン・ビルガー・アレクシスフォルデンと結婚したことをきっかけに、スウェーデンにも活躍の幅を拡げる。そんななか、ソニアの人気に目をつけたナチスの国家弁務官のテアボーフェンは、彼女をプロパガンダに利用しようと画策。一方でスウェーデンの諜報部からもスパイとしてナチスに潜入することを要請されるのだ。
そんなソニアの人気女優ぶりは劇中の衣装からも垣間見ることができる。華やかなデザインが特徴的な藍色の帽子に大ぶりなファーを合わせるという主張強めなアイテムに包まれながらも、そのインパクトに負けない存在感。それはまさに、スター性抜群のソニアだからできる着こなしといっても過言ではないだろう。さらにオレンジのグローブをアクセントにして、派手さのなかに大人らしいこなれ感を入れるスタイルも見逃せない。
ゴージャスさとカジュアルさが融合!華やかさを際立たせるパーティスタイル
ベルダルはソニアの衣装についてこのように語っている。「彼女は女優だったので衣装にこだわりがあり、真珠や毛皮が大好きだったようです」。それを表しているのは、劇中でソニアが舞台上に立つ際に魅せるパーティスタイル。真珠のアクセントで彩られたゴージャスなヘアアクセサリーが、ソニアの華やかさをより一層際立たせている。
また、白地に黒のドット柄のノースリーブトップスで大胆に肌見せをし、鮮やかなターコイズブルーのワイドパンツを合わせたスタイルも魅力的。艶やかでありつつ、大人カジュアルな抜け感のある組み合わせについて、劇中では「適当に選んだ服よ」と余裕たっぷりなセリフも。このゴージャスさとカジュアルさの組み合わせが、1940年代の北欧ファッションの最先端だったのかも。
スパイらしさ満点!暖色でまとめられたジャケットスタイル
スウェーデンの諜報部からの要請を一度は拒否したソニアであったが、逮捕された父親を解放させるためナチスへの潜入を決めることに。デアボーフェンに接近して彼の邸宅に潜入した彼女は、次第に彼から寵愛を受けるようになる。そして、今度はナチスのスパイとして北欧諸国の情報を収集することを依頼されるのだ。
ドイツ諜報部と公園で密会するシーンでソニアは、かっちりとしたジャケットスタイルを披露。キャメルのロングジャケットやブラウンの羽根つき帽子などの控えめな暖色系の色味でまとめつつ、ブルーのインナーを差し色にした見事なトータルコーデ。そのファッションと立ち居振る舞いから放たれるこの上ないエレガントさは、スパイとしての説得力をより高めているといえよう。
ほかにもベーシックな白のブラウスに大ぶりな花モチーフのピアスを合わせたスタイルであったり、ハートに矢が射抜かれたトップスをまとったカジュアルな姿など、第二次大戦中を描いた映画とは思えないカラフルさと、現代から見ても洗練された印象を受ける衣装が次々と登場。製作陣がこだわり抜いたファッションの数々に注目しながら、激動の時代を生き抜いた人気女優の運命を見届けてほしい。
文/久保田 和馬