『ブラックパンサー』チャドウィック・ボーズマン遺作がNetflixで配信…“男女格差”に向き合った逸話も明らかに
『ブラックパンサー』(18)で世界的人気を博し、今年8月28日に43歳の若さでこの世を去ったチャドウィック・ボーズマン。彼が生前に主演を務めた『21 Bridges』で共演したシエナ・ミラーはイギリスの映画誌「Empire」のインタビューで、チャドウィックが自身のギャラの一部をシエナに譲渡し、ハリウッドで近年問題視されている男女の賃金格差を是正に向けて行動を起こしたというエピソードを明らかにした。
「この話をすべきか迷ったけれど言います。これはチャドウィックがどういう人間だったかを示す話だから」と語ったシエナは、同作のオファーをもらった当時、子育てで疲弊し仕事復帰を躊躇していたことを明かす。そして「私はスタジオ側が承諾しないであろう金額を提示しました。するとチャドウィックは、私が提示した金額になるよう自分のギャラから補填し『これはあなたに支払われるべき金額で、あなたにはその価値がある』と言ったのです。ハリウッドにいる男性が、そのように優雅に敬意を表してくれるなんていままで経験したことがありませんでした」と振り返り、チャドウィックの早すぎる死を悼んだ。
『21 Bridges』は「アベンジャーズ」シリーズのルッソ兄弟がプロデューサーを務め、人気海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」を手掛けたブライアン・カーク監督がメガホンをとったクライムサスペンス。
自らプロデュースにも参加したチャドウィックはニューヨーク市警の刑事アンドレ・デイヴィス役を演じ、シエナはその相棒となるフランキー・バーンズ役を熱演。昨年11月に北米で公開され、興行収入ランキングで初登場4位にランクインを果たしたが、現時点ではまだ日本公開は決まっていない。
一方、チャドウィックの遺作となったNetflix映画『Ma Rainey’s Black Bottom』が、12月18日(金)より配信されることが決定した。デンゼル・ワシントンがプロデューサーを務めた同作は、1920年代に活躍し“ブルースの母”と呼ばれた歌手マ・レイニーを描いた伝記映画。『フェンス』(16)でアカデミー賞助演女優賞を獲得したヴィオラ・デイヴィスがマ・レイニー役を、ボーズマンは野心的なトランペッターのリーヴを演じる。
同作は来年のアカデミー賞の有力作品の一角として大きな注目が寄せられており、チャドウィックが助演男優賞を受賞する可能性もゼロではないと言われている。もし受賞が叶えば、『ネットワーク』(76)のピーター・フィンチ、『ダークナイト』(08)のヒース・レジャーにつづき、俳優部門で3人目の死後受賞者となる。
いずれにしてもチャドウィックの俳優としての功績や人間としての魅力は、今後も語り継がれていくことだろう。
文/久保田 和馬