『AKIRA』『マッハGoGoGo』からの影響も?ヨン・サンホ監督が明かす『新感染半島 ファイナル・ステージ』の舞台裏
「『AKIRA』や『マッハGoGoGo』から影響を受けました」
――『新感染半島~』はハリウッド製のアクション映画を彷彿させるつくりですね。たとえば、わかりやすくゾンビ映画という点ではジョージ・A・ロメロ監督の『ランド・オブ・ザ・デッド』(05)を連想させますね?
「確かに影響を受けました。ロメロ監督が見せてくれたアポカリプス以後の世界は、とても興味深かった。貧富の格差も描かれていましたからね」
――廃墟と化したなじみの世界に潜入する点では『ニューヨーク1997』(81)を連想しましたが、世界観の点で影響は受けましたか?
「『ニューヨーク1997』は観ていません。続編の『エスケープ・フロム・L.A.』は観ていますが、確かに世界観では影響を受けているかもしれません。世界観という点では、大友克洋のコミック『AKIRA』から、むしろ大きな影響を受けていると思います。ネオ東京にアメリカの軍隊が潜入してくるという、あの展開はとても印象的でしたが、それは本作にも取り入れています」
――カーアクションは圧倒的で、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)を連想させますが、これは意識されたのですか?
「アクションに限らず、多大な影響を受けています。この映画もポスト・アポカリプスもので、残忍な支配者がいましたね。ただ、カーチェイスに限れば、子どもの頃に見ていた日本のアニメーション『マッハGoGoGo』を意識しました。ガジェットを駆使しながらのカーチェイス、それを子どもがやってしまうというアイデアが面白いし、大人顔負けのドライビングテクニックを見せるジュニという女の子の心情を描くうえでも参考にしました」
――カーチェイスでは実写のアクションとCGがうまく組み合わされていますが、苦心された点はありますか?
「ジュニはを演じたイ・レは子役ですから、実際に車の運転はできません。なので、車の疾走シーンはすべてCGにしました。とにかくCGの場面は膨大だったので、撮影前に10ヶ月かけて準備を進めましたから、こちらの苦労はありませんでした。が、イ・レには大変だったかもしれません。静止している車の中で、ドライビングテクニックを体現し、なおかつ感情を表現するわけですから」
――ラストのジュニのセリフはパンデミックを生きる人への励ましのように聞こえましたが、今現在のリアルなパンデミックの世界に、この映画はどんなメッセージを投げかけるとお考えですか?
「この映画を作っているときは、もちろん、こんな時代が来ることは予想もしていませんでした。この映画のテーマは、絶望的な世界の中で、どんな希望を見つけられるのか?ということです。そういう意味では、現在の世界にも符合しますね。この時代に、こんな映画を撮れたことは、クリエイター冥利に尽きると思います」
取材・文/相馬学