ハラハラアニメにお疲れ？大人も子どももいまこそ見たい“新生”ムーミン！

哲学的な言葉も…愛すべきキャラたちが放つセリフが心にしみる

「ムーミン谷のなかまたち」はシリーズ1、2ともに各13話で構成され、1話は約23分。原作のエッセンスが凝縮されたオリジナル脚本のストーリーで、原作ファンの心をくすぐるエピソードがあちこちに盛り込まれている。原作の持つ文学作品としての魅力と、イギリス人監督らしいユーモアの要素のバランスも絶妙。ムーミン一家と仲間たちの毎日が、テンポよく描かれている。

ムーミンたちが繰り広げるなにげない愉快な日常を、1年間の美しい四季の移り変わりとともに描いたシーズン1に対し、シーズン2では冒険のエピソードが満載。後半では中年のアイデンティティの危機に直面したムーミンパパが、家族を連れ、住み慣れた谷から灯台の孤島に移住するなど、舞台そのものにも大きな変化が見られる。キャラクターそれぞれがこれまでとは違う一面を見せ、等身大の不安を抱えて悩み、やがて困難を乗り越えて家族の再生へと向かうドラマティックなストーリーが、いまの時代を生きるすべての人の心に響く。

日本語吹替版では、ムーミントロール役に寺島惇太、ムーミンママ役に井上喜久子、ムーミンパパ役に松本保典といった実力派の声優陣に加え、俳優の高橋一生が人気キャラクターのスナフキン役を務めている。大人っぽくて落ち着きのあるスナフキンのセリフがすてきで、思わず“スナフキン沼”にハマってしまったという声も。「優しさは連鎖する。きっかけさえあれば」、「特別な友だちっていうのは、耳が痛いことでもちゃんと言ってくれる人よ」、「変化することが必要な時があってね。そうしないと、当たり前に思ってしまうのよ。相手のことまで」など、各エピソードでキャラクターたちがつぶやく、哲学的で宝物のような言葉の数々も胸にしみ、第14回声優アワードでは、彼らが演じる個性豊かなキャラクターたちと世界観の表現が評価され、キャスト一同がキッズファミリー賞を受賞した。

大人も子どもも夢中にさせるムーミンと仲間たち

ムーミンの物語がこれほど長い間、世界中で愛されてきたのは、子どもと大人の両方を惹きつけ、その世代によって様々な楽しみ方ができるから。子どもたちはハグしたくなるような姿のムーミンを好きになり、冒険ストーリーに胸をときめかせる。一方、大人たちは、白黒はっきりした勧善懲悪でなく、グレーの部分があるところに人生の複雑さと詩的な深みを感じる。主役から脇役まで全員が大きな存在意義を持っている個性豊かなキャラクターたちが、そうした魅力を体現している。

無邪気で心優しいムーミントロール、多くの人の精神的支えになる愛情深いムーミンママ、いつだって冒険を追い求める楽天家のムーミンパパ、反骨精神旺盛で毒舌のリトルミイ、自由と孤独と一人旅を愛するスナフキン…。種族も性格もライフスタイルも違う者同士が無理に自分を曲げることなく、共感も求めず、ゆるやかにつながって一緒に生きていく世界には、人生に疲れた時、未来が不安になった時のヒントもたくさん。ムーミンは子どものものと思っている大人にこそ、ぜひ楽しんで見てほしい。

ちなみに、日本限定の豪華版Blu-ray BOXではデザートプレートとカトラリーのセットや、エコバッグなど、“ステイホーム”に適したおうちで使える特製アイテムもたっぷり。家でムーミン谷の冒険気分に浸ってみるのもおすすめだ。

文＝石塚圭子