三石琴乃が5000字で語る、セーラームーンと歩んだ30年「“あの頃”の女の子に、トキメキを届けたい」

インタビュー

三石琴乃が5000字で語る、セーラームーンと歩んだ30年「“あの頃”の女の子に、トキメキを届けたい」

「決意に燃えるセーラー戦士たちの表情が、とっても美しいんです!」

キャラクターデザインには、90年代アニメシリーズの初期を手掛けた只野和子が復帰している
キャラクターデザインには、90年代アニメシリーズの初期を手掛けた只野和子が復帰している[c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

劇場版作品として今回新たに製作された「デッド・ムーン」編。バトルシーンの迫力はパワーアップしながらも、セーラー戦士たちの変身シーンは90年代アニメシリーズ放映時を彷彿とさせる演出で、当時からのファンにもうれしいパートになっている。

「劇場版でうれしいのは、やはり大きなスクリーンでセーラー戦士たちの活躍が観られるところ。特にうさぎちゃん以外の4戦士にも注目してほしいですね。彼女たちも今回、それぞれの描く“夢”と、セーラー戦士としての使命のはざまで葛藤するシーンがあります。それでも最後に『私の進むべき道はこう!』と決意する表情が、とっても素敵なんです!もう、額縁に入れて飾りたいくらい(笑)。その美しい戦士たちの表情を、ぜひスクリーンで観ていただけたらと思います。映像スタッフの皆さんもとてもエネルギーを使って描いてくださっています。花が散る、羽が舞う…そんな演出も全編にわたってちりばめられていて、常に“風”を感じるような仕上がりになっています」。

今回の劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』は前後編。前編ではスーパーセーラームーン以外の戦士たちが活躍するバトルシーンが見られるが、うさぎ自身はそれだけでなく衛との関係に悩む場面が多く描かれた。

「前編ではちびうさとエリオスの淡い恋や、4戦士の葛藤が描かれています。でも『うさぎちゃんは活躍しないの?』って思われちゃいそうですよね(笑)。もちろん前編ではスーパーセーラーちびムーン/ちびうさとの親子そろっての変身や、新たなアイテムを使っての華麗なバトルも詰め込まれていますが、ぜひ後編にもご期待いただきたいんです。前編では衛とすれ違い、思い悩むシーンが多かったぶん、後編のデッド・ムーンとの決戦では、スーパーセーラームーンも大活躍しています。さらに、デッド・ムーンの魔の手から地球を守るためにセーラー戦士だけでなく衛の力も加わってクライマックスへと盛り上がっていくので、ぜひ後編もあわせて観てほしいですね」。

「うさぎとちびうさの関係性が、“姉妹”から“親子”に近づいた」

うさぎとちびうさの、“家族であり親友”である距離感も見逃せない
うさぎとちびうさの、“家族であり親友”である距離感も見逃せない[c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

1992年のテレビアニメ放送開始からは実に29年が経過した。放映当時、作品が社会現象ともいえる人気を獲得していく過程をどのように見て、感じていたかをふり返ってもらった。三石は意外なことに、主人公であるうさぎを演じながらも、「これでいいのかな?」と自信が持てずにいたという。

「当時は携帯電話やSNSもまだなかった頃ですから、作品への反響も時間が経たないと見えてこないような時代でした。だから、うさぎを演じながらもこれが正解なのかわからずにいたんです。でも、駅で女の子が『今日は土曜日だから、早く帰ってセーラームーンを観るの!』とお母さんの手を引いて歩くのを偶然見かけたことがあって…。そのときに、私の演じたキャラクターが、作品が、ちゃんと届いているんだ!とうれしくなったのを覚えています」。

それ以降も様々なキャラクターを幅広く演じてきた三石だが、年月を経るなかでセーラームーン/うさぎというキャラクターへのアプローチに変化はあったのだろうか?

「アプローチが変わったというよりは…私にとって『90年代のセーラームーン』と、原作準拠の『Crystal』『Eternal』は別の作品であるととらえているんです。『Crystal』では、それまでに演じていたうさぎちゃんやセーラームーンの世界はいったんゼロにして、それまでとは違う“別次元のうさぎちゃん”として、新たな仲間(新キャスト)と一緒に作品をつくり上げているところなんです。『Crystal』『Eternal』のうさぎちゃんは、どちらかというとしっとりとした大人っぽいところがある印象ですね。原作を忠実に再現しているということもあって、脚本にもモノローグ表現が多くなっています。彼女の心のなかにある迷いや心配事を台詞として表現することが多くなりました」。

前編では「私たちになりたくて」、後編では「“らしく”いきましょ」という往年の名曲がよみがえり、ちびうさの心情に寄り添う
前編では「私たちになりたくて」、後編では「“らしく”いきましょ」という往年の名曲がよみがえり、ちびうさの心情に寄り添う[c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

また「Crystal」以降では、うさぎとほかのキャラクターの関係性にも変化があるという。例えば未来のうさぎと衛の娘・ちびうさとの関係は、より“親子”らしくなったように感じられる。これも「Crystal」『Eternal』ならではの見せ方。


「90年代のアニメでは、ちびうさは生意気な女の子。子どもという立場を利用して、うさぎたちを翻弄していく…という色合いの強いキャラクターでしたね。うさぎとは姉妹みたいな関係で、でもちびうさのほうがお姉さんっぽい雰囲気で…(笑)。そこにまもちゃん(衛)が加わると、家族みたいになるんですよね。衛という男性が入ってくることで、うさぎに大人っぽさや女性っぽさが出てくる感じがあります。『Eternal』でも、ちびうさと衛と3人でいるシーンでは、自然に家族のような関係になっています」。


「シアターカルチャーマガジンT.(ティー)」43号、好評発売中!
【大人も夢見る「美少女戦士セーラームーン」】特集では、今作のテーマ「夢」をキーワードに、大人もときめく魅力をお伝えします。