三石琴乃が5000字で語る、セーラームーンと歩んだ30年「“あの頃”の女の子に、トキメキを届けたい」
「夢を追いかけている人に、セーラームーンのエネルギーを届けたい」
1997年に原作の連載が、同年にテレビアニメ「美少女戦士セーラームーンセーラースターズ」の放送が終了してからも、人気が衰えることなく世界中で愛され続ける「美少女戦士セーラームーン」シリーズ。この作品がここまで人気を得たのは、どのような魅力があったからなのだろうか。三石は当時を思い返しながら語る。
「『セーラームーン』は、宝石や星や恋とか、女の子の大好きなキラキラした憧れが全部詰まった宝石箱みたいな作品だと思うんです。それから、『普通の女の子が変身して戦う』ことかな。変身ものという点についても、当時の『女の子は女の子らしく』という枠から飛びだしているんですよね。一方で、うさぎちゃんが戦士としての自覚がないまま変身してしまい、『痛いのも怖いのもイヤ!』と逃げだす場面もあります。うさぎちゃんはお勉強も運動も苦手。そんなドジな女の子が、セーラー戦士に変身して敵を浄化するパワーを持ち、みんなが憧れる存在になる。女の子だって、大切なものを守るために男の子にも負けないくらい強くなれるのよ!って、セーラームーンはあの頃の女の子たちに勇気を与えてくれていたんじゃないかな」。
本作をつらぬくテーマは“夢”。三石はデビュー前、社会人として働きながら声優の勉強に励んでいたそうだ。自身が声優という夢を追いかけていた時代の経験を、彼女はこう回顧する。
「アルバイトとしては、サンシャイン60のエレベーターガールやスポーツクラブの受付などを経験しました。20歳の時には就職して東京都庁に出向していたのですが、勉強しながら仕事を続ける生活は、正直『辛いな』と思ったこともありました。でも、目上の方への礼儀であるとか、普段は厳しい上下関係がありながらもお酒の席ではくだけるところなんかを実際に経験したことで、お勤めをされているキャラクターを演じる際の自信につながったのかなと感じています。役柄でいうと、NHK教育テレビ(現・Eテレ)の『なんでもQ』という番組でチョウのエレベーターガールという役をいただいた際には、独特の節回しに経験が活きたこともありました。『遠回りしたように感じるけれど、あの頃の経験が自分を助けてくれたんだな』と、いまでは思っています」。
そんな自身の経験を踏まえ、「夢を追いかけている人にこそ、ぜひこの作品を観てほしい!」と笑顔を見せる。
「頑張っている人にはよりエネルギーを与えてくれるし、くじけそうだったり、うまくいかなかったりして戸惑っている人にも届けたい。そうして悩む時間もきっと大切な時間で、『セーラームーン』からパワーをもらって、また一歩を踏みだしてほしいな。いまの子たちにも、この映画を観て恋をしてほしいですし、90年代アニメシリーズを観てくれていた、“あの頃”の女の子たちにも当時のトキメキをまた届けられたら素敵だなって思います」と、うさぎを思い起こさせるような、まっすぐな眼差しで締めくくった。
取材・文/藤堂真衣