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ベルリン銀熊賞の濱口竜介監督が会見「作品規模の大小にかかわらず映画祭は取り上げてくれるものだと、改めて証明された」

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ベルリン銀熊賞の濱口竜介監督が会見「作品規模の大小にかかわらず映画祭は取り上げてくれるものだと、改めて証明された」

第71回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞した『偶然と想像』の濱口竜介監督が3月6日、オンライン記者会見に出席。受賞の喜びを語った。

本作は、タイトル通り「偶然」と「想像」をテーマにした3話のオムニバスからなる濱口監督初の短編集。濱口監督自身が、『ハッピーアワー』(15)などのプロデューサー、高田聡と共に企画立ち上げを行い、2019年夏から約1年半をかけて製作した。会見には、高田プロデューサーも出席した。

第1話 『魔法(よりもっと不確か)』には、古川琴音、 中島歩らが出演
第1話 『魔法(よりもっと不確か)』には、古川琴音、 中島歩らが出演[c]2021 NEOPA / Fictive

「こういったオンラインでの記者会見は初めて。そもそも記者会見が不慣れ」と口火を切り、今回の受賞について「本当にうれしく思っています」と喜びを噛み締めた濱口監督。「小さな体制、小さなチームで作られた映画。会議室のようなリハーサル部屋で、俳優さんとリハーサルをすることから始まった。数人から始まっている映画。コロナの状況を受けながら、撮影の体制も変えながら完成させたものが、ベルリン国際映画祭というとても大きな映画祭で賞をいただいたことを、とてもありがたく思っています」と完成までの旅路を振り返りながら、感謝を語った。

受賞の報せは、映画祭のアーティスティックディレクター、カルロ・シャトリアンから「電話で話せるか。決して悪い話ではないから」というメールが来たそう。カルロとプロデューサーの高田と共に3人でZoomをし、うれしい報告を受けたという。“銀熊賞”という位置付けについて、濱口監督は「『金熊賞じゃなかったな』という気持ちは、そんなになかったというのが正直なところ。そもそもコンペティションに入ることも、受賞することも、そんなに予想していなくて。金よりは、銀が似合うような映画なんではないかとも思っています」と笑顔を浮かべていた。

自身にとって初の短編集での受賞がかない、濱口監督は「そもそも短編を自分の制作のサイクルのなかに加えたいと思っていた。短編だからできることがある。試したいことを実験してみたり、演出の技術を維持したり、そういうリズムを作ることができる」と吐露。世界に向けて自身の存在を強くアピールしたが、「『こういうことができますよ』という一例を示せたのではという気がしています。それが魅力的なものだと思えば、作品規模の大小にかかわらず映画祭は取り上げてくれるものだと、改めて証明されたところもある。いま小さな体制で作っている人たちも、より多くの観客との出会いにつながることがあると思ってほしい」と同志にエールを送る。

古川琴音がモデルの芽衣子役を演じる
古川琴音がモデルの芽衣子役を演じる[c]2021 NEOPA / Fictive

「どの作品でも1週間から10日くらいかけてリハーサルをする。ひたすらホン読みをして、言葉が自動的に出てくるようになるまでやる。現場に行った時には、『覚えた言葉を自由に、思ったようにしゃべって構わない』ということをお伝えする。そういう時に驚きがあることを期待している」とじっくりと時間をかけて、役者と向き合うことを大切にしているという濱口監督。「『PASSION』を作った時に、『俳優と共に生きる時間がまだ足らない』という批評をいただいた」ことがとても心に響いているという。それからはタッグを組む俳優陣と「共に生きること、重ねていくことがひとつの目標になった」そうで、本作では「それが具体的にできた。こういう結果になって、とてもうれしく思っています」と感慨を語っていた。

濱口監督は1978年生まれの42歳。『寝ても覚めても』(18)がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、黒沢清監督の『スパイの妻』では共同脚本を務めた。村上春樹原作、西島秀俊主演の『ドライブ・マイ・カー』が今夏公開予定。

取材・文/成田 おり枝

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