岡田准一『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』で「自分のクレイジーさが伝染していった」濃密な現場語る

インタビュー

岡田准一『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』で「自分のクレイジーさが伝染していった」濃密な現場語る

「自分のクレイジーさが、スタッフの方々にも伝染していきます」

前作では、フランス人のアラン・フィグラルズが、メインのファイトコレオグラファーを務めていて、岡田は一部のアクションを手掛けていたが、今回の岡田はその重責を1人で担い、アクション監督の横山誠と共にディスカッションを重ねて、様々なチャレンジを試みた。

ファブルのキレキレのアクションに息を呑む
ファブルのキレキレのアクションに息を呑む[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

「アクションは、労力がいる割にすごいものを撮るのが難しく、『その日にできることをやってほしい』といったオーダーでやれることは、たかが知れています。だから今回はしっかりと準備をし、安全性を測ったうえで、いろいろな動きが検証できる横山さんにアクション監督として参加していただきました。動きや構成は、江口監督を含め、若いアクションチームで作っていったんです」。


なかには、アクション通がうなるようなマニアックな技も登場する。「僕にとっては師匠の1人であるブラジリアン柔術の橋本(知之)さんが参加してくださって、まだ世界のアクション作品では誰もやってないであろう技を披露してくれました。そういうコアなアクションもあれば、西洋の構成で撮ったわかりやすい殺陣もあります」。

ファブルの最強の相棒、ヨウコ(木村文乃)
ファブルの最強の相棒、ヨウコ(木村文乃)[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

岡田は、日本でアクション映画を撮ることの難しさついて「予算や撮影の仕方だけではなく、道路交通法違反でできないことなど、問題は山ほどあります」と述べつつ「今回は僕自身、少しクレイジーになっていた気がします。これまでの現場を振り返っても、自分ががむしゃらにやれる時は、ある種の狂気をはらんでいたのではないかと。そのクレイジーさは、スタッフの方々にも伝染していくので、今回は通常ならできないこともできた気がします」と手応えも感じた様子。

ファブルこと佐藤の日常のシーンにほっこり
ファブルこと佐藤の日常のシーンにほっこり[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

「例えば『こんな画、撮れませんか?』と言ったら、天井に綱を引いて、そこを走らせるというワイヤーカムを使ってくださいました。それはスポーツの中継でしか見たことがなかったし、『撮影費がすごくかかるので、難しい』という声も出たんです。でも、どうせ作るのなら、いい作品にしたい。僕は25年以上この仕事をしていますが、自分がいかに闘えたかというところに価値を見いだし、それが自分のキャリアになった気もします」。

「本作のキーパーソンを堤真一さんに演じてもらうということで、すごく安心感がありました」

宇津帆の怪演に注目
宇津帆の怪演に注目[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

今回、宇津帆役を、「SP」シリーズなどで共演してきた堤真一が演じているが「『ザ・ファブル』で大事なのは敵役なので、そのキーパーソンを堤真一さんに演じてもらうということで、すごく安心感がありました。今回の“宇津帆編”は、佐藤の変化も含めて大事なエピソードだし、宇津帆を、堤さんがどう演じてくれるのかも楽しみでした」と全幅の信頼感を口にする。

ファブルと交流するわけありのヒロインに平手友梨奈
ファブルと交流するわけありのヒロインに平手友梨奈[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

宇津帆と暮らす、足の不自由な少女、佐羽ヒナコ役には平手友梨奈がキャスティングされた。
「平手さんはアイドルとして“天才”と評されてきた方で、すごくのめり込む方なんだろうなとは思っていましたが、共演してみたら、いいものを作ることで満たされる方だと感じました。人気が欲しいといった意識では動いていないですし、でもネガティブで、すぐに顔を隠そうとするから『顔を隠しちゃダメ』といじっていましたが、可愛らしくて魅力的な方でした。本作で、僕は浮世離れしたファブル役でアクションシーンを頑張りましたが、いわば堤さんと平手さんが主軸の物語でもあるので、そこが見どころになるんじゃないかと」。
共演者とオフショットでのエピソードについて尋ねると「コロナ禍での撮影だったので、ご飯なども全然一緒に行けなかったです」と残念そうに語る。

ファブルが宇津帆、ヒナコと対面
ファブルが宇津帆、ヒナコと対面[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

「途中で緊急事態宣言が出て、一時期、撮影が中断しました。皆さんそれぞれに、エンタメをどうすればいいのかとか、自分たちが映画を撮る意義はなんなのか、いろんなことを考えたと思います。だからこそ、エンタメで誰かが笑ってくれて、少しでもいい時間を過ごしてもらえたらいいなと思いながら、現場に臨みました。今回は特に、皆さんの心に届くものを作りたいという想いが強かったと思います」。

『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は6月18日(金)より全国公開
『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は6月18日(金)より全国公開[c]2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

取材・文/山崎伸子

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