カカオがタパス・メディアを買収…「恋するアプリ」「梨泰院クラス」から『スペース・スウィーパーズ』まで、高まる“ウェブトゥーン”需要|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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カカオがタパス・メディアを買収…「恋するアプリ」「梨泰院クラス」から『スペース・スウィーパーズ』まで、高まる“ウェブトゥーン”需要

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カカオがタパス・メディアを買収…「恋するアプリ」「梨泰院クラス」から『スペース・スウィーパーズ』まで、高まる“ウェブトゥーン”需要

5月11日、韓国のウェブ企業、カカオ傘下のコンテンツ企業カカオ・エンターテインメントは、ロサンゼルスを拠点とするウェブコミック(ウェブトゥーン)のポータルサイト、タパス・メディアを買収合併すると発表した。買収金額は5億1千万ドル(約555億円)。タパスは、60000人以上の作家によるファンタジー系、ロマンス系のコミックと小説を揃え、クリエイターの63%、読者の80%が18歳から24歳までの女性というサイト。アジアでの知名度を高めてきたカカオが米国市場のきっかけにしたのは、ウェブトゥーンだった。報道によると、カカオは近日中にNY証券取引所、もしくは韓国内で新規株式公開を予定しているという。

ウェブトゥーンというのは、韓国から広まったデジタルコミックの総称で、スマートフォンやコンピュータで読むことを前提に、縦スクロールで描かれたコミック。日本でもLINEマンガやピッコマといったサービスが提供中だ。アメリカにも多数のウェブトゥーンのプラットフォームがあり、デジタル・コミック市場は賑わっている。


その一因と呼べるのが、ストリーミング・サービスによる映像化だ。Netflixが2月に配信した韓国初のSF映画『スペース・スウィーパーズ』(21)のウェブトゥーンは、映画とほぼ同時期に米国ではタパス、日本ではピッコマ、そしてフランスとインドネシアでも配信されている。ちなみに映画は、配信日から5日間に渡りNetflixの世界ランキングで1位を記録している(配信データサイト、Flixpatrol調べ)。『スペース・スウィーパーズ』は先日行われた第57回百想芸術大賞の特殊効果賞を受賞、続編も計画されているという。

【写真を見る】Netflixで世界ランク1位獲得の映画『スペース・スウィーパーズ』。原作はデジタル・コミックの“ウェブトゥーン”
【写真を見る】Netflixで世界ランク1位獲得の映画『スペース・スウィーパーズ』。原作はデジタル・コミックの“ウェブトゥーン”

日本でも人気を博している韓国ドラマにはウェブトゥーン原作の作品が多く、有名なところでは「梨泰院クラス」「ミセン- 末生-」「キム秘書はいったい、なぜ?」「ナビレラ」、Netflixオリジナルの「Sweet Home -俺と世界の絶望-」や「恋するアプリ」などがある。また、アメリカのデジタルコミックサイトWebtoonsで連載中のニュージーランドの作家レイチェル・スマイズによる「Lore Olympus」は2019年の時点で2億9900万アクセスを記録した特大ヒット作。ギリシャ神話の新解釈物語で、すでにNetflixでのアニメ化が決定している。

実は今年3月、世界各国で提供している音楽ストリーミングサービスのSpotifyとカカオの音楽著作権会社カカオMとの間で、グローバル・ライセンス契約が折り合わず、IUやEpik Highを始めとした数百のK-POPアーティストの楽曲が、Spotifyから突如消えるという出来事があった。2月1日よりSpotifyが韓国でのサービスを開始したことにより、韓国音楽配信市場の大きなシェアを持っていたMelon(カカオが経営する音楽配信サイト)とのコンフリクトが生じたのではないかと報じられている。その後、約10日後に2社間の協議を終えて、再度カカオMが権利を持つK-POPアーティストの楽曲が、170か国3億4500万人以上のSpotifyユーザーに再度提供されることになった。

一時期ライセンス契約の摩擦からか、SpotifyからK-POPアーティストの楽曲が消えるという時期があった
一時期ライセンス契約の摩擦からか、SpotifyからK-POPアーティストの楽曲が消えるという時期があった画像はSpotify(@spotify)公式Instagramのスクリーンショット

ハリウッドでは、スタジオだけでなくストリーミング企業が市場参入したことによってIP(知的財産)獲得戦が加熱している。そんななか、タパス・メディアのカカオ・エンターテインメントによる買収は状況を大きく変えていく可能性がある。先述したように、カカオはニューヨーク証券取引所、もしくは韓国証券取引所での新規株式公開を目指しており、ウェブコミック、K-POP楽曲といったIPを利用し世界市場を取りに行く準備をしているところなのだろう。

文/平井 伊都子

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