スタジオジブリへのリスペクトがいっぱい!『あの夏のルカ』監督が明かす、宮崎駿から受けた影響とは?
「トイ・ストーリー」シリーズや第93回アカデミー賞長編アニメーション賞に輝いた『ソウルフル・ワールド』など、子どもから大人まで幅広い世代の心をゆさぶる驚きと感動の物語を生みだしてきたディズニー&ピクサー。その最新作となる『あの夏のルカ』が、本日よりディズニープラスにて見放題で独占配信開始。これに合わせ、本作でメガホンをとったエンリコ・カサローザ監督が、アニメ界を代表する巨匠・宮崎駿から受けた影響を語ってくれた。
本作は北イタリアの美しい港町“ポルト・ロッソ”を舞台にしたファンタジー・アドベンチャー。水に濡れると姿が変わり、海を自由自在に泳ぐことができる不思議な力を持った“シー・モンスター”の少年ルカは、禁断の掟と言われる人間の世界に秘めた憧れを持っていた。ある時彼は、人間の世界を知る親友のアルベルトとともに海の世界を出ることを決意。やがて2人の無邪気な冒険は、海と陸とに分断されてきた2つの世界に大事件を巻き起こすことに。
『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)のストーリー・アーティストをはじめ、多くのピクサー作品に参加してきたカサローザ監督。「子どもの頃に宮崎監督の『未来少年コナン』を観て大好きになり、それがきっかけでアニメーションの仕事に就くことを考えるようになりました」と明かす彼は、宮崎の代表作のひとつである『紅の豚』(92)のヒロインと同じ“フィオ”という名を娘に付けたり、同作の主人公ポルコ・ロッソの名を『あの夏のルカ』の舞台となる街の名前の参考にするなど、さまざまなかたちで多大な影響を受けてきたという。
「僕は宮崎監督の水彩画が好きです。彼が鉛筆や水彩で描くものはとても美しいですよね」と語るカサローザ監督。アニメーション制作の面でもその影響は絶大だったようで、自身の監督デビュー作でアカデミー賞候補にもなった短編『月と少年』(11)のエンドロールでは自ら描いた水彩画と鉛筆画を披露。本作でも宮崎作品からインスピレーションを受けた手書きのタッチを踏襲したり、劇中にも水彩画を取り入れるほどのリスペクトぶり。それにはプロデューサーを務めたアンドレア・ウォーレンも「私たちはコンピュータで映画を作るけれど、手描きだからこそ生まれる雰囲気はすごく良いと思いました」と熱い賛辞を贈っている。
カサローザ監督が自身の少年時代の体験をきっかけにストーリーを構想し、自身が生まれ育った北イタリアの海岸を舞台に選んだ本作は、宮崎作品がなければ生まれていなかったのかもしれない。本編の随所に散りばめられた宮崎作品やスタジオジブリ作品へのリスペクトを探しながら、夏にぴったりな友情の物語を堪能してみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬