「より良い世界が先にある」クリス・プラットが語る、『トゥモロー・ウォー』に込めたパンデミック後への願い
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)で一躍脚光を浴び、翌年に公開された『ジュラシック・ワールド』(15)が歴史的な大ヒットを記録。どちらもシリーズ化され、一気に世界のトップスターの仲間入りを果たしたクリス・プラットは、主演最新作となる『トゥモロー・ウォー』(7月2日よりAmazon Prime Videoにて独占配信)で、他の多くのハリウッドスターと同じように“プロデューサー業”に初めてトライした。
「俳優としての経験は積んできたけれど、エグゼクティブ・プロデューサーを務めるにあたっての経験はとても少なかった。当たり前のように行われていると思っていた撮影の準備段階の過程も見ることができ、多くを学ぶことができたと思っています。まるで結婚式の準備のように、数ヶ月前から膨大な細かい作業が始まっていて、誰かが決めないと前に進めない。大勢のスタッフが関わっていることを目の当たりにしたので、これまで以上に多くの方々への感謝の念を抱くことになりました」。
『レゴバットマン ザ・ムービー』(17)のクリス・マッケイ監督がメガホンをとった本作は、現代と2051年の未来を舞台にしたSFアクション映画だ。2051年から現代へやってきたタイムトラベラーのグループから伝えられた緊急のメッセージ。それは30年後に人類が恐ろしい未知の生物と戦うことになり敗北するという内容だった。そして彼らは現代の民間人と兵士に、戦いに参加することを呼びかける。高校教師のダン・フォレスターは、幼い娘のために世界を救うことを決心し、疎遠になっていた父親や優秀な科学者たちと協力しながら戦いに参加することに。
「この作品の脚本を受け取った時、抜群のセンスとこだわりの持ち主であるマネージャーから『絶対にやった方がいい』と言われました。いざ読んでみたら、その言葉の意味がよくわかりました。壮大なアドベンチャーにドラマにアクション。すごいクリーチャーも出てきて、大作映画の要素をすべて兼ね備えている。ダイナミックなストーリーテリングで感動もできて、同時に考えさせられる内容でもある。これは語られなくてはならない物語であると強く感じました」。
そう明かすプラットは、完成版よりもトーンが暗かった初期段階の脚本を修正する作業に関わったり、本作を作る上で必要となるとアニメーション作業の経験が豊富なマッケイ監督を抜擢するなど、エグゼクティブ・プロデューサーとしての充実した製作過程を振り返っていく。「これまで有名な原作がある超大作シリーズに出演することで、高額な製作費をかけた映画の経験を積んできたからこそ、ブランド力に頼らない内容の映画も求められていることを知っているのです」と、俳優としての経験が本作に活かされていることを語った。
もちろん“俳優クリス・プラット”としての魅力も存分に活かされていることも忘れてはならない。プラットが演じるダン・フォレスターは、幼い娘を持つ父親であると同時に、J.K.シモンズ演じるジェームズの息子でもある。「いままで演じた役のなかで、ここまで感情の機微を表現しなくてはならない役柄は他になかった」と明かすプラットは、「私自身も父親を大きな存在として捉えているし、なにより昨年娘が生まれて女の子の父親になった」と、ダンとの共通点を挙げていく。
「父親をとても尊敬していると同時に、自分も親になったことで父親の不完全な部分も許せるようになった。ダンも物語が進むにつれて、ずっと疎遠になっていた父親に似ているところが自分にあると気付いていく。作品を観てくれる人たちにとっても、才能を持っていながら発揮する機会がなかったり、本当にやりたいことができていないと感じるところなど、ダンに共感してもらえる部分が多々あると思います」。
最後にプラットは「次回作では日本に行って直接ファンのみんなに会いたいと思っています」と、プロモーションで来日できない残念さを吐露。「でもこの映画は全世界のために作った作品です。共通の敵と戦うために世界が一丸となって戦う。より良い世界が先にあると信じて、科学や知識人の力と人々の努力で困難を乗り越えていく。現実でもきっと、パンデミックが収束したらより良い世界になっていると望んでいます」と、本作に込めた想いを熱く語った。
構成・文/久保田 和馬